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大学コンテンツの著作権保護、知財本部の機能強化が効果的

これってどうなの?著作権 大学の現場で #12

これまでの連載で著作権を巡って大学内外の環境が大きく動いていることを述べた。著作権法改正35条の施行や課題解決型学習の普及は、教育面で知的財産法全般を踏まえた処理を促している。授業の異時公衆送信の補償金支払いでは、大学財務面の影響だけでなく補償金が教員に還元されるケースも想定した整理が必要だ。

【学生の指導継続】

職場のリソースを使って教員が制作したデジタル教材が多大な価値を生んだ場合、社会的な要請として論文や日常使い教材の著作権個人帰属とは異なる処理が求められる可能性もある。あわせて従来型とも言える学生のリポートコピー&ペースト問題やソーシャルメディアを使った権利侵害行為への、大学としての教育的指導も継続することになる。

従来、大学内のコンテンツ系創作物に由来する管理は、部局で分散処理されることが多かった。特に授業においては素通りか、担当教員個人で処理をするケースが大半だ。全体を見通した統一的な著作権処理の概念は薄く、管理ノウハウの蓄積に難があった。例えば出版契約でひな型の契約書をそのまま受け入れて、出版コスト全部を大学が支出した場合を含め、後に問題が発生しそうな条項が残る契約が散見される。

【統一的な処理】

大学はオリジナルなコンテンツを生み出す宝庫である。統一的な処理を試みる過程でのノウハウ蓄積が、教員の著作物に対する一定の権利を守りつつ、社会に対する説明責任の実現、大学ブランドを利用した収益化と教員への分配などの実現可能性を高めることになる。統一的処理は学内に新たな機能や組織を整備する方法もあるが、図のように産業財産管理を中核とする学内知的財産本部の機能強化も効果的だろう。

【知財本部強化を】

前任校の山口大学知財センターは、知財教育部門も持つことから著作権を専門とする教員が配置され、授業に関する著作権処理や著作権契約にも関与したことで統合運用に一定の効果があった。いずれにしても、大学内で行われている創作活動の実態を可能な限り開示して、社会と対話をしながら大学内コンテンツ管理の最適解を探る活動が必要であろう。クールジャパンの人材育成や大学発コンテンツ価値化を目指して、知財本部機能の強化を提案したい。(おわり)

◇帝京大学教授・共通教育センター長 木村友久

日刊工業新聞2020年12月17日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
知財本部は特許に重点を置いた組織だが、著作権の重要性が高まっている今、それも担当してはという提案は、なるほどと思った。オープンイノベーション(OI)機構などの陰になった感もある知財本部だが、存在感が再び高まるのではないか。著作権の連載全12回はこれで完了した。私は駆け出し記者の時代から「ビッグニュースでなくても、切り抜いてスクラップされるような記事を」と指導されていたが、この連載は好例だと感じた。スクラップでなくても、ウエブのニュースイッチで連載12回すべてを上げているので、思い出した時々に検索して、参考にしてもらえると嬉しく思う。

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