ソフトバンクの投資戦略、「GAFA」傾注は“つなぎ”?
2020年はソフトバンクグループ(SBG)の“通信離れ”が加速した。6月に持分法適用会社である米携帯電話大手TモバイルUSの株の一部売却を、8月には国内通信子会社ソフトバンクの株式の所有割合を62・1%から40・4%に引き下げることを相次いで決定。さらに9月、携帯端末流通事業を手がける100%子会社の米ブライトスター・グローバル・グループ(BGG)の全株式の売却も決めた。
SBGは3月、負債削減などのため4兆5000億円の保有資産を売却または資金化する方針を掲げていた。孫正義会長兼社長はコロナ禍を踏まえ「防御をしっかり固める」と繰り返し強調。8月時点で約4兆3000億円の調達を決めた。だが、9月には半導体設計子会社の英アームの全株式を米半導体メーカーのエヌビディアに売却すると発表。当初の目標を大きく超える形で現金を積み上げる格好となった。
孫氏は以前から「SBGは投資会社だ」と述べてきた。通信事業から遠ざかることは投資会社化の一環と言えそうだが、焦点は今後の投資戦略だ。11月の決算会見では「上場会社は対象外、と誰が決めたんだ」と発言。人工知能(AI)関連で有望な会社へは、規模にかかわらず投資をしていく姿勢を示した。
実際、SBGは米IT大手4社のGAFAなどへの投資を推進。9月末時点で米アマゾン・ドット・コムの現物株式を63億3100万ドル(約6647億円)保有している。大手IT株は流動性が高く、緊急時にも現金化しやすい。SBGの保有資産は中国アリババ株の占める割合が大きく、そうした偏りを見直す意味もある。
ただ「我々が存在しなくてもアマゾンなどは立派に成功しているし、これからも成功し続ける」(孫氏)。SBGは良くも悪くも、ベンチャーを対象に果敢な投資を行うのが持ち味だった。GAFAに傾注しているのは、コロナ禍が収束するまでの“つなぎ”にすぎないのかもしれない。