1兆円超の営業赤字に陥るソフトバンク、孫さん!反転攻勢の芽は?
投資会社としての性格を強めてきたソフトバンクグループ(SBG)が正念場を迎えている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う市場環境悪化などで投資事業の不振が鮮明化。SBGは2020年3月期連結決算(国際会計基準)で1兆円超の営業赤字を計上する。携帯電話事業では米スプリントが連結対象から外れたため国内を手がけるソフトバンクの重要性が増す。SBGは当面、大胆な手を打ちづらく、反転攻勢の機をうかがう日々が続く。
SBGは20年3月期の連結営業損益が1兆3500億円の赤字(前期は2兆3539億円の黒字)となる見通しを示した。人工知能(AI)関連の有望企業に出資する運用額10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」で、約1兆8000億円の投資損失を計上することが響く。
SVF事業には昨秋ごろから暗雲が垂れ込めていた。19年7―9月期のSVF事業の営業損益は9703億円の赤字。10―12月期も2251億円の赤字だった。シェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーや、米配車大手のウーバー・テクノロジーズなどの業績不振や株価下落が影響した。
SBGの孫正義会長兼社長は20年2月の決算説明会で「SBGは事業会社ではなく投資会社。株主価値で(評価を)測るべきだ」などと述べた。だが、19年7月に計画を公表済みだったSVFの2号ファンドについては現時点で設立されておらず、設立時期も未定。「運用資金を抑えたブリッジファンドで実績を出した後に始める選択肢もある」と述べるなど、慎重な姿勢ものぞかせていた。
そこに新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による投資環境の大荒れが追い打ちをかけた。3月には保有資産を最大4兆5000億円売却して調達資金を最大2兆円の自社株買いに充てると発表するなど、当面はSVF事業を保守的に運営せざるを得ない。
SBGにとって投資事業に次ぐ柱は携帯電話事業だが、米スプリントは4月に米TモバイルUSとの合併が完了し、SBGの連結子会社から持ち分法適用会社になった。スプリントは巨額の有利子負債を抱えていたため、SBGは財務負担が減る。一方でスプリント事業は19年4―12月期に1378億円の営業利益を計上しており、その貢献がなくなる。
国内携帯電話の事業会社であるソフトバンクは堅調で、当面のSBGの業績を下支えしそうだ。ただ楽天の本格参入などにより、中長期的に競争が激化する可能性はある。SBGは投資事業の大幅な改善が見通しにくい中、孫氏の次の一手に注目が集まる。
(取材・斎藤弘和)