JICAと「無印良品」が最強タッグ!最貧国キルギスで商品づくり支援

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キルギスの大統領(中央)も一村一品運動のモノづくりの現場を視察

一村一品運動モデルに

国際協力機構(JICA)は「無印良品」を展開する良品計画と共同し、中央アジアの最貧国であるキルギス共和国で商品づくりを支援している。2010年の取り組み開始から10周年を迎え、良品計画が扱うキルギス産商品が増えた。農村の地域活性化の一翼を担い、新型コロナウイルス流行による収入の落ち込みを補っている。10年間の経験から日本企業による途上国支援の形が見えてくる。

キルギスの面積は日本の半分、人口は620万人。農業と畜産が主要産業であり、国内総生産(GDP)は日本の500分の1の84億ドル。国民生活にはソ連崩壊の影響が残り、村落には共同体意識が薄い。現地で商品づくりを指導するJICA専門家の原口明久氏によれば「井戸端会議の9割はお金の話」というほど生活費に困窮する。

キルギスでの商品づくりは、良品計画からの提案がきっかけだった。途上国で商品を開発したいと思った同社担当者が「JICAなら何かできるはずだ」と相談を持ち込んできた。JICAは100以上の海外事務所に打診し、キルギスを選んだ。同社は農村で暮らす女性に現金収入の機会を作りたいと考え始めた。また、国内に働く場を確保することで、国外に出稼ぎへ行く若者を減らすことも目的とした。

良品計画向けの商品づくりを支えたのが、一村一品(OVOP)事業だ。大分県の地域振興策である一村一品運動をモデルにキルギス各地に“特産”を開発しようとJICAが06年から取り組んでいた。公益法人「OVOP+1」が商品企画や販路開拓を担い、意欲のある住民が生産に参加できる。

日用品は中国や欧州から輸入されている。OVOP事業は現地の農産物を手間暇かけて加工することで「まねされない商品」(原口氏)を目指した。

タンポポの加工食品、ハーブを燃やした灰由来のせっけんなど、付加価値の高い商品が生まれた。農村の女性は洗濯機や冷蔵庫などを購入できるようになった。

キルギスの農村の女性たちが良品計画向けのフェルト製品を丁寧に製作

良品計画向けには羊毛を圧縮したフェルト製品を担った。OVOP事業でモノづくりの下地があったとはいえ、高い品質が要求された。素材の量を均等にする計量器や形状を均一に整える型も準備した。商品の出荷が始まった11年以降、良品計画からの発注額は毎年増加。動物の人形や小物入れ、スリッパなど種類も増えた。20年はコロナ禍による特産品の生産減少を良品計画向けの商品生産でカバーした。

良品計画にとってキルギス産商品の売上高は決して大きくない。それでも10年継続できた理由について原口氏は「良品計画の役員も何度も現地に来てOVOPの取り組みを見てファンになり、そして貧困問題を何とかしないといけないと思ったのでは」と語る。

良品計画向け商品の仕上がりを確認。今年は多くのキルギス産商品が生まれた

途上国支援を検討する企業が増えている。原口氏は「ビジネスとして成立させる観点からプロジェクトを作ることが重要」と説く。OVOPは良い商品を作ると収入を得られる仕組みを整えたので成功した。資金や物質の提供だけでなく、良品計画のように現地に何度も足を運ぶことも継続の秘訣(ひけつ)だろう。

日刊工業新聞2020年12月4日

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