端末の値ごろ感で5G契約狙うドコモ、頭を悩ます日々が続く事情
NTTドコモは5日、第5世代通信(5G)スマートフォン6機種を6日から順次発売すると発表した。このうち4機種の価格は3万円台から8万円台で、値ごろ感を訴求して5G契約の上積みを狙う。だが通信料金では競合他社が4Gの割安な新プランを発表済み。ドコモも対抗策が必要になりそうだが、4Gで値下げに踏み切ると5Gの勢いをそぐ恐れがある。5G基地局の整備も急がねばならず、かじ取りが問われる。
6機種のうち、普及モデルは韓国サムスン電子の製品など4機種。従来のドコモの5Gスマホは10万円程度が主流のため、普及モデルの投入で客層は広がる可能性がある。
ドコモは3月に商用化した5Gサービスの契約数を20年度末に250万とする目標を掲げている。10月下旬時点の実績は約50万にとどまるものの、計画は上回っているという。10月に発売した米アップルの「iPhone(アイフォーン)12」や、今回発表の6機種で販売を大幅に上積みしたい考えだ。
ただ、もくろみ通りに5G利用者が増えるかは予断を許さない。KDDIとソフトバンクはそれぞれ、サブブランドで4G向け新料金プランを今冬に投入すると決めた。ドコモも何らかの形で追随せざるを得ないとみられる。4Gの割安なプランの選択肢が増えれば消費者が5Gを選ばない可能性も高まる。
5日の発表会に登壇したドコモの吉沢和弘社長は「(値下げを)4G限定にするのか、5Gも含めてやるのかは今からの検討だ」と述べるにとどめた。NTTがドコモを完全子会社化するためのTOB(株式公開買い付け)手続きを進めており、ドコモはTOB期限の11月16日までは自社の株価に影響を与える発表はしにくい。サブブランドの発足を含めた複数の方策が考えられるが、ドコモは発表時期も含めて頭を悩ませる日々が続く。
5Gが使えるエリアの拡大も課題だ。ドコモは5G用に割り当てられた新周波数帯で23年3月末に基地局数を3万2000、人口カバー率を約70%にする目標を新たに示した。一方、ソフトバンクとKDDIは4G用の周波数帯を5Gに転用し、両社とも22年3月に基地局数を5万、人口カバー率を90%に引き上げるとしている。
ドコモも21年度後半に4G周波数の転用を始める方針だが、5G基地局数と人口カバー率の単純な比較では不利になりかねない。
高速・大容量通信が可能な新周波数の利点を的確かつ地道に訴える活動が求められそうだ。