まずauがジャブ。携帯料金値下げが“神経戦”に
携帯通信業界で通信料金の引き下げをめぐる“神経戦”が続いている。KDDIは29歳以下の顧客の月額料金を6カ月間、最大1600円割り引く「auワイド学割」を始めた。まずは、動画視聴やゲームで大容量を使うユーザーが多い若年層向けの料金割り引きで政府にアピールしたとも言える。今後、30歳以上のユーザー向け料金プランに注目が集まるが、一方で第5世代通信(5G)のインフラ整備は急ぐ必要があり、経営のかじ取りは難しさを増す。(取材=苦瓜朋子、斎藤弘和)
ドコモ・ソフトバンクも検討
「(動画配信サービスを付属した)バンドルプランは圧倒的に若年層から支持を受けている」―。高橋誠KDDI社長は16日に開いた発表会で「auワイド学割」の狙いをこう説明した。
KDDIによると、データ通信使い放題と「ネットフリックス」「テラサ」などの動画配信サービスのセットプラン加入者の約65%が29歳以下。この調査結果に着目し、学割対象年齢を従来の25歳以下から29歳以下にした。
ただ、KDDIはこれだけで携帯料金の引き下げが十分とは考えていない。高橋社長は、政府が国際的にそん色のない料金水準を求めていると分析。政府の要請に対応した新料金について「12月、2021年1月までかからず、早期に我々の考えを示せるのではないか」とする。NTTドコモ、ソフトバンクを含めた新料金プランの発表も予想される中、携帯各社の神経戦が年末年始に向け熱を帯びることになる。
一方、5Gに不可欠となる基地局整備には莫大な投資が必要。KDDIは年内に47都道府県で5Gを利用できるようにし、21年度末にも全国人口カバー率を90%に引き上げる。
ドコモやソフトバンクも5G基地局整備を加速している。NTTの澤田純社長は「(携帯料金引き下げで)減った収益を他の事業や顧客の増加でカバーし(5Gなどの)新しい投資を行う」と決意するが、短期の業績が落ち込む懸念は残る。携帯各社は長期視点で収益構造を変革していけるかも問われる。