軽量×強靱!クモ糸の繊維構造の再現に理研が初成功
理化学研究所環境資源科学研究センターの沼田圭司チームリーダーらは、クモ糸の繊維構造を人工的に再現することに初めて成功した。高機能素材として知られるジョロウグモの主要なたんぱく質に着目し、クモ糸の紡糸機構を明らかにした。天然のクモ糸と同様の構造と物性を示す糸を人工的に合成する技術開発の糸口になると期待される。京都大学、慶応義塾大学との共同研究。
今回、人工的に再現したのは、クモ糸の中でも、けん引糸と呼ばれる糸。軽量かつ強靱(きょうじん)な物性から高強度の構造材料など、幅広い分野への応用が期待されている。細い繊維が束状になっていることは明らかになっているが、その紡糸機構は不明だった。
沼田チームリーダーらは、クモ糸のたんぱく質の中でも比較的水に溶けやすいたんぱく質を遺伝子組み換え大腸菌を使って試験管内で作製した。溶液の水素イオン指数(pH)が中性の時は特に何も起きなかったが、溶液が弱酸性になると、たんぱく質濃度の高い液相とたんぱく質が入っていない液相に分離した。さらに酸性度を強めると、濃度の高いたんぱく質がきれいに繊維化して網目状になることを確認した。たんぱく質の両末端構造がこの現象に影響していることがわかった。
次にこの網目状の微小繊維を引っ張ると、微小繊維が束状に集まった。この繊維構造は天然のクモ糸が形成する微小繊維の束状構造と同一だと推察した。
日刊工業新聞2020年11月5日