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高いものは4万円以上。犬向け高級ペット用品が世界20カ国で売れるワケ

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)良い意味で商売っ気の無い「Charley Chau」
 最も高いもので4万円以上もする犬用製品が世界20か国以上に販売され、返品率は0.5%未満。ソーシャルメディアでは高評価。そんな犬用品のECサイトが英国にある。

 犬用の高級ベッドを販売している「Charley Chau」だ。http://www.charleychau.com/
ホームセンターで売られているような安い犬用ベッドや、形だけ「高級」を謳っているベッドの質の悪さにうんざりし、「犬が快適に寝られる」ことを第1目標にベッドを作り、ファンを獲得していった。

 日本もペット用品のECサイトが増えているが、世界に目を向けてもその現象が起きている。愛犬家というのはやっぱり犬を家族の一員として扱うのだなと、ここ数年で増えている犬のためのECサイトを見ていてふと思う。

 以前、私のブログでもペット用品ECのサイト事例を取り上げた。犬用の高級オーダーメイドペットフード「Petbrosia」や、犬用のサブスクリプションサービス「BarkBox」などだ。犬のためのECサイトが大きな成功を収めている事実から、「商品の価格が高くても、質が良ければ購入する」という飼い主は多いことがわかる。

 さて、2010年に英国で設立された「Charley Chau」は、現在英国内だけではなく、世界各国から注文を受けており、これまでに20か国以上の顧客に商品を配送している。世界各国からも支持を得ているECサイトだ。

愛犬用のまともなベッドを見つけることができなかった


「Charley Chau」が支持を集めているポイント
◎品質の良いペット用品を求める消費者のニーズを開拓
◎「商品の製造も世界中の犬が快適に寝られるようなベッドや毛布を作りたい」という情熱や犬への愛情
◎出荷前の検品にチカラを入れて、返品率は0.5%


 「Charley Chau」の創業者はChristine Chau(写真左。以下クリスティーン)氏。なお写真右の人物は姉で共同創設者のJenny Chau氏だ。クリスティーン氏はダラム大学で経営学を学んだ後、1997年にさまざまな企業でWebマーケティングに携わってきた人物。同時に犬をこよなく愛する愛犬家でもある。

 彼女は自分が飼っているイタリアン・グレイハウンドのために、デザイン性が高く、かつ犬が快適に寝ることのできるような、機能性の高いベッドを探していた。しかし、ホームセンターやペットショップなどではまともなベッドを見つけることができなかった。

 格安で買える商品は確かにある。一方で「高級ベッド」という触れ込みで販売されている品もあったが、その多くが地元のホームセンターにある20ポンド(約3690円)の犬用ベッドと同じ工場で作られたもので、ぱっと見はできが良くても中身はゴツゴツしている。とても犬が快適に寝られるものではなく、数か月後には放り出してしまいたくなるような代物だった。

 一番重要なのは実際に使用する犬にとって寝心地が良いかどうか

 犬用ベッドも家の中にあればインテリアの一部だから、見た目が良いに越したことはない。しかし、一番重要なのは実際に使用する犬にとって寝心地が良いかどうかだ、とクリスティーン氏は考えていた。この不満を愛犬家であった姉に話してみると、彼女も同じくベッドが見つからないでいるということが分かった。

 そこで2人は、見た目が良いだけでなく、数か月、数年後も快適に使えるような実用的な犬用のベッドを作ろうと考える。そして2年の歳月をかけて独自のベッドを開発。Facebookに投稿したところ、愛犬家の仲間たちから「自分も欲しい」という要望をたくさんもらうことができた。

 この時までクリスティーン氏の頭の中にあったのは、「良いベッドを作る」ことであり、ビジネスを起こそうという考えは特になかった。しかし、仲間の要望に応えてベッドを作るうちに、ソーシャルメディアやメディアサイトにてクリスティーン氏の作ったベッドが紹介されるようになった。そして、次第にビジネスの色彩を帯びていったようだ。

 やがて世界20か国以上の顧客に向けて販売を行うほどの人気を獲得。その過程で、アパート内でベッドを生産することも非常に難しくなり、130万平方メートルの工場に移動することになったという。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自身は愛犬家ではないが、犬好きの人の愛情の注ぎ方はすさまじいのは傍目にも分かる。だからこそ作り手の顔や気持ちが分かることがとても重要なのだろう。創業者が女性というのもアドバンテージがある気もする。

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