ただのまとめサイトにするな!バーチャル展示会たちの奮闘
「バーチャル展示会」という市場が立ち上がろうとしている。展示ブースのコンピューターグラフィックス(CG)パースなどを手がけていたデザイン会社が、バーチャルな展示会を作ろうとサービスを投入している。課題は集客効率だ。短期間のイベントでは来場者数が集まらず、イベントが長期化し始めている。そのまま常設コンテンツとして日常的に使うデジタル資産の側面を強めている。市場の主役は中小企業。オンラインでの営業プラットフォームの一つに育てようと各社奮闘する。
【来場者集め苦戦】
「せっかくバーチャル展示会という新しい市場が立ち上がろうとしているのに芽を摘む気なのか」とスペースラボ(東京都渋谷区)の柴原誉幸社長は憤る。コロナ禍でリアルの展示会が中止や縮小にあい、オンラインに移行している。バーチャルな展示会をうたったものの、当初は出展社ページのまとめサイトやカタログダウンロードサイトの形態に留まった。来場者を集めるのに苦戦した。
そこでフルCGの展示会空間を作る「バーチャル展示会360」を始めた。来場者に向かって呼び込みやセミナーを配信したりできる。チャットボット(自動応答ソフト)や名刺交換、ビデオ会議予約など、オンラインのコミュニケーション機能を詰め込んだ。
柴原社長は「ただのまとめサイトだと大手のページしかクリックされない。展示会の主役はたくさんの中小企業。中小企業に目が向く仕組みにしなければ展示会を成さない」と断言する。
フルCGで展示会場を作れば、来場者は会場を回遊してさまざまなブースの前を通る。リアルと同じ動線にすることで、たくさんの出展社が集まる相乗効果を狙う。
【ショールーム化】
クロスウェーバー(東京都港区)もリアルからバーチャルに進出した。「バーチャライズ」としてブース制作を請け負う。イベント主催者からの引き合いは多い。安斎敏昭本部長は「提案は頭一つ抜けていると評価を頂いている」と胸を張る。両社ともブース制作が約20万円からで、接客スタッフの宿泊交通費などを削減できるぶん、リアルの展示会と投資対効果で勝ると見込む。
そして制作コンテンツの常設化を推している。クロスウェーバーは展示会の後は単独でのショールームとしての活用、スペースラボは展示会自体の常時開催を提案する。
【商材探しの場に】
例えば、家具屋のバーチャルショールームの場合、リビングの大画面テレビから家族でアクセスし、家具の選定や組み合わせを楽しむ使い方が想定される。
常設展示会では、業界として商材探しの場を用意する。柴原社長は「リアルな営業機会が急減し、オンラインで補完する仕組みが必要だ」と説明する。
コロナ禍ではインサイドセールス(非対面型営業)の仕事が増えた。バーチャル展示会はその接点の一つになる。中小企業がホームページを作るだけでは集客は難しい。ただ業界を挙げて場を作り、バーチャルな講演や勉強会を開いて集客すれば中小企業にも送客できるかもしれない。従来の展示会とは違った運営手法が求められる。
連載・日常に溶け込む展示会 バーチャルで加速
(上)ただのまとめサイトにするな!バーチャル展示会たちの奮闘(10月17日公開)
(下)バーチャル展示会が長期化、隙間時間の争奪戦が始まる(10月18日公開)