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農業の持続可能性に貢献したいカルビー社長の思い

農業の持続可能性に貢献したいカルビー社長の思い

伊藤秀二社長

カルビーはサステナビリティー(持続可能性)戦略を強化し、情報発信にも力を入れている。プラスチック削減目標を策定し、生態系保全や気候変動対応の国際的な活動への参加・賛同を相次いで表明した。「正しい側にコストを使うと消費者も価値を感じてくれる」と語る伊藤秀二社長に、持続可能性への取り組みを強化した理由を聞いた。

―カルビーの経営を持続可能にする上で重要な課題は。
 「食の安全・安心の確保だ。そして食の安定供給も欠かせない。わが社だけが独占的に、乱暴に供給するようではいけない。社会・環境全体の持続可能性が高まるように供給する必要がある」

―カルビーが商品を安定供給するには、原料を供給する農業の持続可能性の向上も不可欠です。
 「日本のバレイショ(ジャガイモ)の生産量は約200万トン、そのうち37万トンをカルビーが菓子の原料として使っている。一部は輸入に頼るが、安定供給のために国産の使用40万トンを目指す。カルビーは豊作でも決めた価格で購入するので、生産者も農業を安定して続けられる。畑で選別せずに納入してもらったり、カルビーが収穫をしたりなど、負担軽減に協力する。カルビーの事業が、農業の持続可能性にも貢献できると思う」

環境面で正しい側に投資

―プラスチック包装容器を30年までに18年比半減する目標を設定しました。
「プラスチックは商品の品質維持に役立っており、リサイクルが一番良いだろう。カルビーも減らせるところは減らし、変えられるところは変える。環境面で正しい側にコストを使うと消費者も価値を感じ、対価を払ってくれる。破壊された環境を修復する膨大な費用を考えれば、保全につながる目の前の活動に投資すべきだ」

―生態系保全の国際的な活動などに相次いで参加しました。
「参加によって環境活動の目的がわかりやすくなり、継続する意思表示になる。社会がこうしてほしいと思うことをやるのは当然。おいしい商品を作って喜んでもらうことが仕事と思ってきたが、従業員には社会にも役立っていると感じてほしい」

―カルビーほど知名度のある企業にしては、環境問題への取り組みで印象が強くありません。
「取り組んでいたが発信が弱かった。カルビーは商品数が多く、消費者への影響が大きい。身近な商品を作っている企業が、社会・環境問題の解決に取り組んでいるとわかると社会全体の気づきに役立つ。社会に役立たない事業は不要になる。今はもうからなくても社会の持続性が保たれることをしていると、いずれお金が回ってくると私は考える」

【記者の目/消費者意識の底上げ期待】
高校生がプラスチック包装容器の削減を求めて署名を集め、他の菓子メーカーが応じたことが話題となった。カルビーは菓子業界を代表する企業であり、ESG(環境・社会・企業統治)を先導する会社だ。発信を強化し、共感する消費者を増やしてほしい。知名度がある同社なら、日本のESGの課題となっている消費者意識の底上げを担えるはずだ。(編集委員・松木喬)

日刊工業新聞2020年10月16日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
台風襲来によってポテトチップスの供給不足が生じた「ポテチショック」がありました。ポテチ用ジャガイモは輸入が難しく、ほぼ国産。しかも輪作なのでジャガイモを年40万トンなら、他の作物も同量を作らないとポテチの生産を回せません。他の作物の用途開発、農業が魅力ある産業であるための生産者の支援など、将来の経営に向けた課題がよくわりました。紙面・ニュースイッチで取り上げてほしいSDGsテーマを教えて下さい。連絡はニュースイッチの問い合わせまで

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