【ノーベル賞】ブラックホールの最後はどうなるの?ホーキング放射とは?

おすすめ本の抜粋「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい相対性理論の本」

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 2020年のノーベル物理学賞は、ブラックホールの研究で業績を挙げた英オックスフォード大学のロジャー・ペンローズ教授、独マックス・プランク宇宙空間物理学研究所所長のラインハルト・ゲンツェル博士、米カリフォルニア大学のアンドレア・ゲズ教授に授与されることが決まりました。
 日刊工業新聞社が発行した書籍『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい相対性理論の本』(山﨑耕造著)から、ブラックホールに関連する重力波について紹介した項目と、一般相対性理論がブラックホールの形成につながることを示したペンローズ=ホーキングの「特異点定理」について書かれた項目を抜粋し、2回に分けて紹介します。

ブラックホールは蒸発する?

特異点定理とホーキング放射

イギリスのスティーヴン・ホーキング(1942~2018)は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘っていた車椅子の著名な物理学者です。彼の主な業績は、1963年のブラックホールの「特異点定理」と1974年のブラックホールの「ホーキング放射」です(図1)。

図1 ホーキングによる主な定理(イラスト 小島サエキチ)

一般相対性理論は、質量やエネルギーがある場合の曲がった空間の時間発展を定める法則です。空間が極端に曲がると「特異点」(空間や時間が定義できなくなる点)が形成されます。特異点では密度や時空の曲率が無限大となってしまい、時空の重力崩壊に相当します。特異点の近傍では光の速度では脱出できなくなる「事象の地平面」があります。地平線の向こう側で起こることは知ることができないという意味の事象の地平線です。一般相対性理論と量子論との組み合わせにより、このような特異点が必ず存在することが証明されました。これはペンローズ=ホーキングの「特異点定理」と呼ばれています。

特異点では物資も因果律も破壊されてしまうので、事象の地平線に囲まれていない「裸の特異点」があれば問題となります。ペンローズによれば、「宇宙検閲官仮説」により、裸の特異点はなくて、私たちの世界では常に因果律が満たされるとしています。

ブラックホールに対する量子効果を検討したホーキングは、ブラックホールが粒子を放射して、ゆっくりと蒸発するという「ホーキング放射」を提唱しました(図2)。ブラックホール近傍では量子力学的な真空のゆらぎから粒子・反粒子が対生成し、一方がブラックホールに取り込まれ、もう一方がエネルギーを持ったまま放出されます。この放出は熱的放射であり、放射の絶対温度はブラックホールの質量に反比例するので、ブラックホールは放射によりゆっくりとエネルギーを失い、最終的に蒸発することが指摘されています。

図2 ホーキング放射のしくみ
●特異点定理:特異点が必ず存在
●裸の特異点は因果律を破綻させる
●ホーキング放射でブラックホールが蒸発

【用語解説】
裸の特異点:密度が無限大で曲率も無限大となる時空の「特異点」は通常は「事象の地平面」で隠されており、因果律を破ることはありません。隠されてなくて観測可能な特異点を「裸の特異点」と呼びます。

(「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい相対性理論の本」より一部抜粋)
<書籍紹介>

物理学の永遠のテーマである相対性理論の基礎を、工学的応用の面から解きほぐした本。特殊、および一般相対性理論の基礎とその工学への応用例を中心に、アインシュタインの理論としてではなく物理の基礎理論として、実例を挙げながらやさしく紹介する。

書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい相対性理論の本
著者名:山﨑耕造 著
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円

<販売サイト>
Amazon
Rakutenブックス
Yahoo!ショッピング
日刊工業新聞ブックストア

<著者>
山﨑耕造(やまざき こうぞう)
1949年 富山県生まれ。1972年 東京大学工学部卒業。1977年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・工学博士。名古屋大学プラズマ研究所助手・助教授、核融合科学研究所助教授・教授を経て、2005年4月より名古屋大学大学院工学研究科エネルギー理工学専攻教授。その間、1979年より約2年間、米国プリンストン大学プラズマ物理研究所客員研究員、1992年より3年間、(旧)文部省国際学術局学術調査官。2013年3月 名古屋大学定年退職。現在 名古屋大学名誉教授、自然科学研究機構核融合科学研究所名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。
●主な著書
「トコトンやさしいプラズマの本」、「トコトンやさしい太陽の本」、「トコトンやさしい太陽エネルギー発電の本」、「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」、「トコトンやさしい宇宙線と素粒子の本」、「トコトンやさしい電気の本 第2版」、「トコトンやさしい磁力の本」(以上、日刊工業新聞社)、「エネルギーと環境の科学」、「楽しみながら学ぶ物理入門」、「楽しみながら学ぶ電磁気学入門」(以上、共立出版)など。

<目次抜粋>
第1章 古典理論から相対性理論へ
相対性とはなんだろう?「絶対座標と相対座標」/エーテルの中での光の伝播は?「天空の神の物質エーテル」/光の速さを測定する?「レーマー、ブラッドリー、フィゾー」

第2章 物質と時空の概念の進展
ピサの斜塔の実験は等価原理の検証?「振り子の等時性と落体の法則」/慣性質量と重力質量との違いは?「エトヴェシュの実験(1896年)」/ガリレイの相対性原理の登場!「慣性の法則とガリレイ変換」

第3章 特殊相対性理論の基礎
相対性理論の原理は?「光速不変原理と特殊相対性原理」/なぜ時間がゆっくり進むのか?「時間の遅れとウラシマ効果」/縮んで見えるのはお互い様?「ローレンツ収縮」

第4章 特殊相対性理論の検証と応用
短寿命のミュー粒子が地上に届く?「相対論効果による長寿命化」/ジャイロスコープでの相対論効果とは?「サニャック効果」/ジェット旅客機で東回りの時計が遅れる?「ヘイフリーとキーティングの実験(1971年)」

第5章 一般相対性理論の基礎
一般相対性理論の原理と検証は「等価原理と一般相対性原理」/等価原理を検証する!「重力赤方偏移」/慣性力と重力の違いは?「エレベータの思考実験」

第6章 一般相対性理論の検証と応用
光を使って時間を測る?「原子時計と光時計」/日食での観測で実証された!「エディントンの日食遠征隊(1919年)」/重力波は一般相対論からの予言?「アインシュタインの百年前の宿題」

第7章 相対論と量子論の統合
相対論と量子論との違いは?「確定的と確率的」/磁石は相対論的量子論で理解する?「電子スピン」/超ひも理論が核力と重力を結びつける?「ひもと膜の宇宙」

第8章 未来のエネルギー制御
光子ロケットを飛ばす?「物質・反物質の対消滅反応」/ブラックホールのエネルギーを利用する?「ペンローズ過程」/ブラックホールは蒸発する?「特異点定理とホーキング放射」

第9章 未来の時空制御
未来へのタイムマシンは可能か?「超高速ロケット利用とワームホール利用」/過去へのタイムマシンは可能か?「親殺しのパラドックス」/ワームホールは存在する??「ブラックホールとホワイトホール」

第10章 未来の宇宙進化
宇宙の膨張は光速を超えている?「空間の超光速膨張」/暗黒物質とは?「強重力のダークマター」/宇宙に反重力がある?「暗黒エネルギー」

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