プリファードネットワークスと協業する花王の野望

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皮脂はあぶらとりフィルムで簡単に取れる

花王は開発した技術「RNAモニタリング」の事業化にあたり、Preferred Networks(PFN、東京都千代田区)と協働する。同技術は皮脂からリボ核酸(RNA)を採取し、解析するものでRNAを通じて体内の多様な情報を得られる。今後はPFNの人工知能(AI)やRNAの知見を掛け合わせる。研究開発担当で2021年1月に社長に就く長谷部佳宏専務執行役員に戦略を聞いた。(門脇花梨)

―RNAモニタリングにはどんな利点がありますか。
「採取に侵襲性を伴わない。皮脂は血液や皮膚と違い、あぶらとりフィルムで簡単に取れるため人体に負担がない。体の一部である皮脂に含まれるRNAから多くの情報が得られる。美容はもちろん、健康分野でも役立つ可能性が高い」

―PFNとの協働の経緯と狙いは。
「企業として魅力を感じ、こちらから協力をお願いした。花王として知恵を借りたいと思っていたところ、PFNもRNAを日々チェックできるモノを探していたことからニーズが一致した」

「採取した遺伝子がどんな人のどういう情報をつかんでいるかを明らかにできる。RNAを皮脂から採取して、どんなRNAかを解析するまではできているが、その先は協力が必要だ。RNAの意味付けを実施していく」

―想定するRNA解析の活用方法を教えて下さい。
「まずは肌診断での活用を想定する。水分量や明るさをRNAレベルで把握できれば、体の中からきれいにする土台作りをお手伝いできる。AIに学習させるため、データが増えるほど解析精度も上がっていく。化粧品サービスの向上に期待している」

「さらに病気の診断・治療への活用も見込んでいる。うまくいけば早い段階のアルツハイマーの診断や、投与した治療薬が効いているかの判断に使えるはずだ。実用化にはまだ時間がかかるが、活用の幅は広い」

花王専務執行役員・長谷部佳宏氏

―現在、事業化に向け、どの段階まで来ていますか。
「どのくらいの投資をして、どのくらいのスピードで市場投入するかを決める段階に来ている。ビジネスとしてどうしていくか、しっかり社内外で話し合いたい」

【チェックポイント/未知の技術、事業化手探り】
人体に負担をかけないRNAの採取と精度の高い解析を実現したことで、RNAの用途を広げた。肌の状態や病気の状態をRNAレベルで頻繁に確認できるようになる可能性がある。未来を変えうる技術の実用化に、大きな期待が寄せられている。一方で、未知の技術をビジネスとして成り立たせる難しさがある。どの程度のリソースでどのぐらいの利益を生むか注目したい。肌診断としての運用が一つの試金石となりそうだ。

日刊工業新聞2020年10月6日

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