日本郵便がロボット宅配で実証実験、政府も法整備に前向き
日本郵便が、宅配物の配送をロボットで自動化する計画の実現に向け新段階に入った。配送ロボが公道を走行する日本初の実証実験を都内で実施中だ。少子高齢化で配達員不足の深刻化が懸念される。一方、新型コロナウイルス感染拡大で宅配需要は増加しており、自動化への期待は大きい。安全性など事業面、法律など制度面で課題はあるが、実証で知見を獲得し3年後の実用化を目指す。(戸村智幸)
「左に曲がります」―。配送ロボは横断歩道を渡る直前、少年のような声を出し、周囲に自身の行動を伝えた。日本郵便が7日公開した実証で、配送ロボは東京逓信病院(東京都千代田区)から麹町郵便局(同)までの約700メートルの歩道を時速2キロ―3キロメートルで自律走行。内部に積んだ小型荷物を送り届けた。
日本郵便は2017年に配送ロボの実証を初めて実施。19年に災害公営住宅や自動車学校、20年3月に自社ビル内と実証を続けてきた。今回はロボに原動機付き自転車のナンバープレートを取り付け、初めて公道での走行許可を得た。
日本郵便は配達員の慢性的な人手不足に、新型コロナ影響で宅配需要が増加。ラストワンマイル(目的地までの最後の区間)問題に直面する中、配送ロボには「働き方を抜本的に変える」(五味儀裕オペレーション改革部部長)と期待する。
今回の実証は9月に開始し、現在は監視員と非常時の操作対応者、保安員がロボの近くで追従する「近接監視・操作」型で実施中。次のステップとして10月末までの期間中に、「遠隔監視・操作」型に移る計画だ。監視員が別の場所からモニター越しに、複数台のロボを確認でき、実用化に欠かせない。
17年の実証開始以来、ロボを提供するZMP(東京都文京区)の谷口恒社長は7日、「第5世代通信(5G)なら遅延が少なくなり、映像の解像度が高まる」と遠隔監視への将来の5G活用に意欲を示した。
谷口社長は、実用化への課題として、歩道を走行する自転車への対応を挙げた。既に自転車を検知して避けて走行できるが、加速した自転車が急に現れた場合の衝突防止策が必要との認識を示す。
政府は法整備などに前向きだ。7月に閣議決定した成長戦略実行計画で、配送ロボの実用化に向けて制度設計の基本方針を決めると記した。内閣官房日本再生本部事務局の野原諭次長は7日、国土交通省、警察庁と議論するとした上で、「(日本郵便など)事業者の計画に合わせ、21、22年度には社会実装できるようにしたい」と述べた。公道実証がその第一歩になると期待される。