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進むコマツの調達改革、サプライヤー協力会はどう生き残る?

新型コロナウイルス禍のロックダウン(都市封鎖)などで、調達網の維持があらためてクローズアップされている。コマツは1969年12月に部品サプライヤーからなる「コマツみどり会」を組織。中小企業の後継者難やM&A(合併・買収)リスク、廃業リスクなどの問題について対応策をサポートしてきた。米中貿易摩擦に伴う調達網の見直しにも成果を上げている。栗山和也常務執行役員生産本部調達本部長に調達先支援について聞いた。

―みどり会の現状は。

「メンバーは国内156社で、部材購入企業が63社、外注企業が93社。外注93社のうち23社はアジアや中国などに進出済みで、タイやインドネシア、中国などの当社工場に部品・部材を供給している。為替変動や関税、地震、洪水などリスク変動に応じて調達先を自在に変更できる体制が整っている」

―米中摩擦が強まる中、調達の脱中国の動きは進んでいますか。

「米国工場で生産する油圧ショベルのクローラーやフロア部品は以前は中国から調達していたが、19年にインドネシア製に替えた。タンク部品も、20年春から治具などを用意しタイでも生産できるようにした。電子部品の一部はフィリピン製も活用している。建機は顧客仕様が多く、特定企業しか対応できない部品もあるが、それらは自社生産に切り替える形で対応している」

―部品供給を国内サプライヤーに頼ることで、コスト競争力が課題になりますね。

「みどり会メンバーの中で厚板部会、機械加工部会などとテーマや部材に応じて部会を立ち上げ、生産性を高める方法について勉強を重ねている。部品によって、もちろん中国から調達した方が安いケースもある。ただ建機はライフサイクルが長い。安い部品でも政治リスクで調達できなくなったり、供給停止でメンテナンスができなくなったりする恐れもある。当社はこうした可能性も考え、10年先、20年先も安心して使い続けられる建機であることを強調し顧客にアピールしている」

―調達先が廃業して部品調達ができなくなるリスクが高くなっています。

「中小の後継者問題は当社のリスク管理からも重要だ。みどり会メンバーの後継者候補に当社から管理職を派遣して経営研修を行ったり、レーザーマシンなど最新鋭設備の見学会を実施したりしている。顔が見えにくい1次サプライヤーに対してはオンラインの会議や訪問を繰り返している。コロナ禍で訪問が難しい今こそ、オンライン活用の好機だ」

【記者の目/リスク回避、守りを強固に】

中国製鋳物を東南アジア製に切り替える建機メーカーが増える中、コマツは国内鋳物企業や自社の氷見工場(富山県氷見市)から調達しリスクを回避している。鋳物や金型、熱処理などは高度な技術を必要とするため、調達先の支援が不可欠だ。後継者対策や技術指導などコマツの腰の据わった支援は、他社も参考になるだろう。(編集委員・嶋田歩)

栗山和也常務執行役員生産本部調達本部長
日刊工業新聞2020年10月5日

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