倒産した建材用ビニール壁紙の業界上位メーカー、主力行の「債権譲渡」という悪夢

日本ビニル工業、コロナ前からいくつもの信用不安

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7月29日、さいたま地裁より破産手続き開始決定を受けた日本ビニル工業は1947年2月に設立。家具や雑貨、カバン、履物など向けのビニールレザーを主体に、建材として使用されるビニール壁紙の製造を手がけていた。

オリジナル製品を数多く取り扱い、業界上位に位置し、2006年12月期には年売上高約25億9500万円を計上していた。設備投資にも積極的で、09年1月には現本社となる鷲宮工場に全自動倉庫を開設。しかしリーマン・ショック、東日本大震災を経て取り巻く環境が悪化し、原油価格や為替動向の変動により収益面で苦戦を強いられ、その後の決算では経常赤字に陥ることも多く、前後して取引金融機関との関係に変化が生じていた。

17年に入って、主力行が融資分を他行へ借り換えするように要請。18年には同行の貸付債権(借入金)が別の金融業者(債権買い取り会社)に譲渡された。こうした事態を受け、他の取引金融機関も距離を取り始め、対外信用が大きく悪化した同社は自力での再建が困難となった。

そこで同年秋、埼玉県中小企業再生支援協議会(支援協)に支援の申し込みを行ったが、債権譲渡で新たな債権者となった金融業者の姿勢は硬く、再建の道は一向に進まなかった。悪いことは重なるもので、その後は工場火災や社内のインフルエンザ流行と、再建どころか本業でのトラブルが立て続けに発生。支援協の下での再建は断念することとなった。

後ろ盾を失った同社は再建に向けスポンサー探しに奔走。だが、最後は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で売り上げが急減し、資金が枯渇して各種支払いが困難となり、事業継続を断念することとなった。

今回は確かにコロナが駄目を押した格好だが、それ以前からいくつもの信用不安につながる事象が発生していた。とりわけ、金融機関との関係性が重要だと再認識させられる倒産事例であったといえよう。

(帝国データバンク情報部)

日刊工業新聞2020年9月29日

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