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スペース半分で十分!コロナで都内ベンチャーのオフィス戦略が変わる

スペース半分で十分!コロナで都内ベンチャーのオフィス戦略が変わる

クリップラインの新本社。コミュニケーションが不安だとの声にも配慮し、ラウンジを設けた

新型コロナウイルス感染防止で導入が加速する在宅勤務が、東京都に本社を置くベンチャー企業のオフィス計画に影響を及ぼしている。キュービットロボティクスは9月末をめどに、本社を千代田区から中野区東中野へ移転する。クリップラインは港区から品川区西五反田へ本社を移した。在宅勤務で出社人数が減ったためオフィス面積は縮小する一方、来客向けや社員同士の交流促進のためのスペースは確保する点が共通する。コロナ禍はベンチャーのオフィス戦略にも変化を迫る。

キュービットロボティクスは外食産業向けカフェロボットや搬送ロボットの開発を手がける。東中野の新本社は面積が100平方メートルと、現在のほぼ半分で賃料も下がるという。

一方、顧客向けに操作デモができるスペースは確保した。「動画だけではリアル感が伝わらない。アピールにはロボットを実際に動かして体感してもらう現場が不可欠」と中野浩也社長。単なる本社移転なら面積はもっと狭くできたという。

クリップラインも新本社の面積は、234平方メートルと従来の半分以下に抑えた。家賃は月100万円と従来の5分の1で、年間で約5000万円の節約が可能になった。浮いた資金は従業員採用や商品開発に活用する予定。「リモートワークの導入は、感染症対策というだけでなく、通勤や身支度の省略による時間の節約に結びつく。生産性向上も期待できる」と高橋勇人社長は語る。

一方、在宅勤務でコミュニケーションの場が減り孤独感を感じやすくなったり、チームワークを醸成しにくかったりするとの不安の声に応え、新本社は雑談の場となるラウンジ席や、固定席のないワークスペースを用意するなど工夫した。

飛行ロボット(ドローン)関連事業のブルーイノベーションは、業容拡張で2021年にも東京都文京区の本社を移転・拡張する計画だったが、在宅勤務の拡大を受け、計画を取り止めた。在宅勤務者が増えたことで生まれたオフィスの空きスペースは「各種ドローンの展示や飛行デモに活用する」(熊田貴之社長)方針だ。

在宅勤務で出社人数が減ったことを受け、オフィスを縮小して家賃を抑えるといった取り組みだけでなく、それを契機にオフィス機能を高められるよう各社が知恵を絞る。

日刊工業新聞2020年9月28日
小川淳
小川淳 Ogawa Atsushi 編集局第一産業部 編集委員/論説委員
もちろんスタートアップだけでなく、大企業もそうなのですが、小回りの効くスタートアップの方がこうした動きに敏感かもしれません。都内→都内の動きですが、どこまで全国に波及するでしょうか。

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