定額給付金の使い道、家電製品はなぜ上位だった?
新型コロナウイルス感染拡大で先行きの見通せない状況に、消費者は財布のひもを固く締めがちだ。その中で白物家電が“巣ごもり消費”の恩恵にあずかれたのは、家事の負担軽減のニーズが以前よりも強まったことが要因。快適な在宅時間に役立つ家電製品は高価格になりがちだが、政府の定額給付金が購入に一定の効果を与えている。
売れる冷蔵庫
ニッセイ基礎研究所が2062人を対象に実施した調査(複数回答)によると、定額給付金を家電製品や音響・映像(AV)機器の購入・買い替えに使った割合は9・7%。生活費の補填や貯蓄の回答が群を抜く中で、消費先としては国内旅行(10・1%)に次ぐ順位だった。
優先度は低いものの、余裕のある消費者を中心に給付金が家電製品購入の背中を押したようだ。ビックカメラによると、支給開始のころから冷蔵庫やエアコン、ドラム式洗濯乾燥機といった大型家電の販売が増加。家事負担が大きい複数世帯ほど支給額の総額が増え、購入に踏み切りやすいという。日本電機工業会(JEMA)がまとめた製品別の4―8月の出荷数量は、洗濯機が前年同期比2・8%増の195万7000台、掃除機が同9・9%増の182万台、エアコンが同3・8%増の579万2000台だった。
コロナ禍の巣ごもり消費で特に目立ったのは調理家電の販売だ。JEMAによると、4―8月のホットプレートの出荷数量は同70・6%増の51万台、電子レンジが同11・2%増の129万7000台、トースターが同22・6%増の109万3000台だった。外出を控え、内食が増えているためだ。
昼食を簡単に
同時に「在宅勤務の増加で昼食を短時間で簡単に作りたい要望もある」(日立グローバルライフソリューションズ)。同社は自動調理機能を備えたオーブンレンジの販売が好調という。上位機種だが、料理の時間短縮や献立を考える負担を軽減したい消費者のニーズを捉えた。
換気ができる
たとえ高価格でも生活を快適にできる製品は手堅く需要を捉えている。エアコンは引き続き猛暑対策や更新需要が中心だが「換気ができる高単価製品も伸びた」(ビックカメラ)。三菱電機や日立ジョンソンコントロールズ空調(東京都港区)は、今秋投入する新製品で室内機や空気の清潔を保つ独自技術をそれぞれ強調した。
室内環境への関心が高まる中、空気清浄機の4―8月の出荷数量は同69・3%増の67万5000台と高い伸びを示している。機器や室内空気の清潔さを実現する技術は今後より高い評価を得る付加価値となりそうだ。(国広伽奈子が担当しました)