2015年10月21日は「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の日!
劇中に登場する先端技術は実現したのか?
高機能衣料が電子機器に
映画に登場する未来の服は、自動でサイズを調節したり乾かしたりできるようになっている。繊維技術が発達している現在なら、ある程度のことはできるのでは。ナノファイバーの研究と用途展開を進める東京工業大学の谷岡明彦教授によれば「熱を加えたらちょうどいいサイズに縮むとか、導電性の繊維で作った服に若干の熱を与え、全体的に振動させて乾かすなど、その気になればいろいろできるが、人のファッション性とどう折り合いを付けるかが最も大切」だという。実現できる機能と売れることが必ずしも一致しないのが繊維の難しい点だ。そのため新しい繊維は、ファッションではなく工業用途に使われることが多いという。
近い将来で実現可能性が高いのは、衣料を電子機器として使う「ウェアラブルエレクトロニクス」。すでに軍事や消防といった特殊用途向けの開発が進んでいるほか、心拍数や血圧といった生体情報を記録して介護や子どもの見守りに使ったり、いずれは「光を電気に変換できる繊維を使い、携帯端末を充電する洋服ができるようになるかも」(谷岡教授)。未来の洋服への期待はまだまだ高まりそう。
【空中投影ディスプレー 要素技術は発展】
立体映像を表示する方法はいくつか実現されているが、最も有力と言われているのが、記録材料に三次元(3D)映像の情報を記録して立体的に表示するホログラフィー技術だ。映像を投映するパネルがカギとなるが、千葉大学の下馬場朋禄准教授は「コストが膨大すぎるのが難点」と嘆く。
精彩なホログラフィーには1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)間隔の画素が必要と言われる。しかしドットを細かくしながらパネルを大面積化するのは容易ではない。例えば画素の間隔が5マイクロメートルで画素数8000×4000、大きさが2センチ×4センチメートルのパネルだと、価格は家3軒分にもなるという。大きな立体映像を表示するにはそれに応じた大きさのパネルが必要で、コストはさらに高くなる。
現状の技術でも立体映像の表示だけでなく「グローブを付けて手の位置情報をカメラで認識すれば、空中に浮いたパネル映像も操作できる」(下馬場准教授)。個々の要素技術は発展しているが、それを街中で見るにはもう少し時間がかかりそうだ。
【記者ロボット 面白みの判断課題】
映画では何か事件が起こると取材ロボットが現場に飛んでくる。こんな場面が、現実でも見られるようになるかもしれない。東京大学の原田達也准教授が開発しているジャーナリストロボット「ディーモ」は、三次元計測センサーやインタビュー用マイクなどを搭載し、車輪で移動する。カメラで通常とは違う場面を見つけると近づいて通りがかった人に何が起こったか質問し、その内容を記事にしてブログに掲載する。
昼と夜など状況が変わっても異常を見つけ出せる機能や会話能力など課題は多いが、最も難しいのは「見つけた異常が面白いかどうかをどう判断するか」という点。原田准教授は「周囲に見えるものとの関連性を考えれば、異常に優劣をつけられるかもしれない」と、関係の近い画像同士を結びつけて文章化する機能をロボットに搭載することを検討中だ。
将来は「実世界で見逃されている面白いことと、情報世界をつなぐような役割」(原田准教授)として、記者ではなくディーモが取材に走り回る姿を見られるようになるのだろうか。
ロバート・ゼメキス監督、1989年公開のSFコメディー映画。マイケル・J・フォックス演じる高校生のマーティ・マクフライと、クリストファー・ロイド演じるエメット・ブラウン博士(通称ドク)が、マーティの将来の息子を救うためにタイムマシンの「デロリアン」で2015年の未来へ向かい、そこで起こったさまざまなトラブルを解決する。>
(肩書きは全て当時のまま)
日刊工業新聞2013年01月4日 科学技術・大学面の記事に加筆