震災後の確信を形に。塚本の免震装置搭載燃料備蓄タンクがスゴい
塚本(千葉市中央区)は、今春から燃料備蓄タンクの製造・販売事業に参入した。1922年(大11)創業で石油の卸販売と小口配送を手がけているが、2011年に発生した東日本大震災の直後に「油を分けてほしい」と病院や老人ホームの職員から頼まれたことが、製造業に進出するきっかけとなった。
地震や台風などの災害で停電しても非常用発電機を止めるわけにはいかない。それだけに、震災後には燃料備蓄タンクに関する多くの相談が寄せられた。塚本社長は「時間はかかるが事業として成立する」と確信した。
12年7月に開発をスタートし、試行錯誤の末に完成。第1弾として20年7月に千葉中央メディカルセンター(千葉市若葉区)へ納入した。容量990リットルのタンクを3基導入、非常用発電機は33時間稼働できる。
燃料備蓄タンクの特徴は転倒による火災を防ぐため、免震装置を搭載したことだ。評価試験では阪神淡路大震災や新潟中越沖地震、東日本大震災を再現した地震波でも転倒しないことを確認した。
また、タンクを内部殻と外部殻の二重構造にし、真夏の炎天下でも燃料温度の上昇を抑える。さらにオールステンレス製にすることで、さびにくくし、屋上や塩害地域での設置を可能にした。設置面積は他社の従来品と比べ半分で済む。
今後は21年春にも量産タイプを投入する計画だ。材料を見直し、価格を現行品より30%安くする。当面は販売エリアを千葉県と東京都、埼玉県、茨城県に絞り、「自分たちの手の届く範囲で販売し、ノウハウを蓄積する」(塚本社長)方針だ。
さらに「タンクを売りっぱなしにはしない」(同)と強調する。メンテナンスや燃料の補給・交換などタンクに関するソリューション(問題解決手法)を総合的に提供することで、燃料備蓄タンク事業を早期に新しい経営の柱に育成する。(千葉編集委員・中沖泰雄)