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SOMPOがBtoBオークション事業に参入する理由

SOMPOホールディングス(HD)は9月にBツーBオークション事業に参入した。複数のオークションサイトなどとAPI(応用プログラムインターフェース)を通じて連携。自動車保険の契約者から引き取った事故車の売却事業を展開する。個人間フリーマーケットアプリ「メルカリ」の“BツーB版”に近い仕組みで、フリーマーケットアプリの市場規模が拡大する中で、今後の動向が注目される。(取材=増重直樹)

収益率の向上とリサイクルによる環境負荷の軽減などを狙い、契約者から引き取った全損車について、オークションなどで売却する。

現在、首都圏に限定している事故車の引き取りを段階的に拡大し、2022年度中に全国展開を目指す。SOMPOHD傘下の損害保険ジャパンでは、現時点で事故車の引き取り台数が年間5万台になるという。

取引の基盤となるプラットフォーム「AUX Board(オークスボード)」はAPI連携で複数のオークションに同時出品できる。

購入希望者の目に触れる機会が増え、購入希望者が多いほど、価格が競り上がるオークションの構造を生かす仕組み。

単なるオークションサイトにとどめず、売買データを収集し、人工知能(AI)で分析することで、査定業務時に最適な売価価格の設定などを出品者にアドバイスする機能も視野に入れている。

同社は「従来より最適な価格で売却できれば、自動車保険の収益率が改善し、同保険の値下げにもつながる」として、子会社化した会社を通じて実証実験を実施。1―2割程度高値で売却できることを確認したという。

SOMPOHDは、16年4月にデジタル戦略部を新設し、デジタル変革(DX)を推進。AIやビッグデータを活用した既存事業の変革と新規事業の創出を進めている。

BツーBオークション事業は、新規事業創出の事例に該当し、尾股宏グループチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)は「既存事業との親和性を発揮しながら新規事業の数を増やすことが理想だ」と話す。

当初はグループ内での活用だが、将来はプラットフォームを社外に開放し、幅広い商材を扱う方針だ。一例として、転売市場が確立されていない建機やコロナ禍による在宅勤務の普及で不要になったオフィス用品などを想定しており、24年度に約80億円の売り上げを目指す。

日刊工業新聞2020年9月15日

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