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携帯型の石窯オーブン。新しいライフスタイルの創出ってECには重要だよね!

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)従来の概念を壊した商品を開発した「Roccbox」

石窯によって家族や友人とSNSや携帯電話ではできない交流ができる


 「Roccbox」の創業者は、Tom Gozney(以下ゴズニー)氏。英国ハンプシャーにあるリミントンという街の出身で、レンガを使って自分で石窯オーブンを手作りした経験があることを生かして、「The Stone Bake Oven Company」という石窯を生産・販売する会社をすでに設立していた人物だ。

 これまでの石窯は、導入費から燃料費まで価格が高めで、容易に手が出しにくいものだったが、「The Stone Bake Oven Company」の石窯オーブンは価格が安めで消費する木材が少なく、本格的なピザから肉のローストやパン、焼き魚、デザートまでおいしく調理できるものだった。ライフスタイル系の雑誌などで人気を博し、数々の高級レストランから注文を受けているという。

 そんなゴズニー氏が新たにサイトを起ち上げ、商品の開発に挑戦することになったのは、自宅の庭に作った石窯を使ってピザを作ろうと、友人や家族を集めたときがきっかけだった。この「石窯パーティ」で、ゴズニー氏はSNSなどでは得られない素晴らしい交流ができたことに気付いた。石窯をより幅広い人たちに普及させることで、家族や友人が集まるきっかけにしたいと考えた。

 しかし、石窯を一般層に普及させるというのは簡単な問題ではない。石窯は重さが1トンほどある分厚い石、という壁があるからこそ品質の高い調理ができる。これでは、まず庭のない家庭では場所を確保するのも一苦労だし、設置できたとしても1000ドル程度の費用が必要になってくる。一般に普及させるためにはより小さなサイズ、そしてより安い価格を突き詰める必要があった。

 そこでゴズニー氏は3種類の断熱材を使用するなどして独自の構造を考案。小さなボディでも400度の高熱処理ができる性能の高い製品を作るため、2~3年の年月を掛けて開発を行った。その結果、幅413mm、高さ473mm、奥行き531mm、重量20kgまで小型化し、軽量化に成功。これにより一般家庭でも導入可能なだけでなく、携帯して庭やキャンプ場、川辺などでも石窯を使った料理が楽しめるようになったのだった。

新しい製品によりライフスタイルを創出


 ゴズニー氏らはこのように革新的な製品開発をする一方で、資金を獲得するために「Virgin Media Business」が運営する、革新的で斬新な英国のスタートアップを発掘するプロジェクト「Pitch to Rich2015」にも参加していた。

 ここでは、3D画像を駆使した動画を使って「Roccbox」の360度の外観や内部の構造などを説明するとともに、この製品がこれまでなかったライフスタイルを創出する点をアピールした。その結果、2500組いた参加者の中を勝ち抜き、「New Thing」(新しい製品)部門のセミファイナリストにまで残ったという。

 このプロジェクトで、ゴズニー氏は自分の製品によってどのような影響をもたらしたいのかについてこのように想いを語っている。

 「私のビジョンは手頃な価格で、おいしく調理できる石窯を作成すること。この製品によって多くの人たちが今までできなかったスタイルの料理や、コミュニケーションが取れるようになる。一瞬だけネットやテレビなどが織りなすテンポが早くストレスの多い生活から離れて、家族や友人たちとの関係を再構築することができるんだ」(ゴズニー氏)

 新しい調理器具が、より良い料理を作るだけでなく、文化や人々をつなげる橋渡しになる。「持ち運べる石窯」という商品そのものの特長だけでなく、その先にある新しいライフスタイルを伝えている点は、多くのECサイトの参考にしたいポイントの1つだ。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
石窯って仲間感でるな~。しかもピザという結構日常で食べるもので、利用頻度も高い。目の付けどこがいい。「新しいライフスタイル」って、非日常なものを日常に近づけることなのかも。

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