物流最適ルートを300万通りから30分で!トヨタ系と富士通が「デジタルアニーラ」駆使
トヨタ自動車のIT系子会社、トヨタシステムズ(名古屋市中村区)と富士通は、北米の実データを用いて自動車製造部品の物流で最適となるルートを30分以内に見いだすことに成功した。デジタル回路による近似的量子計算技術「デジタルアニーラ」を活用し、トラック配送による膨大なルート数から、300万通り超の候補を抽出し、全体コストが最小となる最適解を導き出した。大規模な物流網の効率化につながるため、トヨタシステムズは1、2年以内をめどに今回の技術を実業務で本格活用する。
北米全土にまたがるトラック配送の実データを用いて計算し、年間物流コストを現行比2―5%削減できることを実証した。デジタルアニーラの第2世代機をベースとして、新開発のソフトウエアや高速化技術を組みわせ、100万ビット級の計算能力を実現。従来の計算手法では成し得なかった300万ルート超に及ぶ大規模なルート計算を初めて解いた。
両社はデジタルアニーラを先駆けとする量子コンピューティング技術を自動車業界のデジタル変革(DX)に適用するため、2年前に物流網の最適化で共同研究に着手。トヨタシステムズは次の目標として、市販車の保守部品や完成車の物流への適用を視野に、富士通との共同研究を継続する。
富士通は実証に用いたデジタルアニーラを2020年中にクラウドサービスとして提供する。物流以外にもさまざまな業種や適用領域への拡大を目指す。
今回の実証は、数百を超える調達先から部品を仕入れ、数カ所の中継倉庫を通り、数十の工場に至るサプライチェーン(供給網)を対象として、トラック数や総走行距離、仕分け作業などを含めて物流コストの最適化を試みた。
その結果、これまで見つけられなかった有効な物流ルートの発見や積載効率の向上、トラック数や総走行距離の効率化といった成果を実証した。
トヨタシステムズによると、専門のプランナー数十人が勘と経験をベースに北米の配送計画を作るのに要する期間は約2カ月間。ただその間に生産量自体が変化してしまい、実施時に計画とズレが生じる。30分以内で策定できれば、正確な生産量に基づいた物流計画を運用できる。
デジタルアニーラが得意とする組み合わせ最適化問題は、複数の都市を効率良く回る「巡回セールスマン問題」が代表例として知られる。巡回セールスマン問題の場合、20拠点を回るだけで、ルートは243京通りに及ぶ。今回は「数百拠点の仕入れ先×数カ所の中間倉庫×数十の工場」と、天文学的な組み合わせ数となる。