コロナ禍でEC拡大、メルカリの米事業に道筋が見えた

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メルカリが米国で展開するフリマアプリ(同社提供)

メルカリが米国で展開するフリーマーケット(フリマ)アプリ事業が真価を問われる局面を迎えた。新型コロナウイルス感染症の影響で電子商取引(EC)関連市場が伸びた点も勘案し、収益化の道筋が見えたと判断。事業継続を決定した。ただ今後は競争激化も考えられ、楽観はできない。国内はフリマアプリが堅調な一方、決済分野では苦闘が続く。将来の収益源の多様化を図る意味でも米国事業の重要性が増す。(取材・斎藤弘和)

「ピンチのときにメルカリがこれほど役立つ基盤になっているのだと気付き、誇りに思った」。米国事業の責任者を務めるジョン・ラーゲリン取締役は、コロナ禍の中でフリマアプリ「Mercari(メルカリ)」が現地の消費者に貢献できたと胸を張る。

【売れる中古品】

もともと米国では、自宅で不用になった家具や道具を庭先に並べて近所の人などに売る「ガレージセール」が盛んだ。こうした文化的背景もあり、非対面での個人間取引はそれほど発達していなかったと考えられている。だが新型コロナの影響に伴い、EC市場が急伸。「買いたくてもなかなか(新品の)在庫がないものが発生した」(ラーゲリン取締役)ことで、中古品にも注目が集まった。

【認知度徐々に】

定量的な結果が出たこともメルカリの自信につながっている。同社は2020年6月期、米国事業で目標としてきた月間取引高1億ドル(約106億円)を突破した。実現できない場合は米国事業の縮小も選択肢に入れていたが、達成したことで事業継続を決めた。「1―3月はマーケティングの先行投資をして認知度が上がってきていた」(同)。その直後、コロナ禍に伴う取引需要の拡大が追い風となった格好だ。

21年6月期の米国事業では、取引高を前期比50%以上成長させることを目指している。黒字化する時期の見通しは公表していない。短期的な黒字化にはこだわらず、中長期的な企業価値の向上を追求する考えだ。

ただ、メルカリの収益構造が“一本足打法”であることを考えると、米国で悠長に構えてはいられない。同社の20年6月期連結決算は193億円の営業赤字だった。国内フリマ事業は、特殊要因を除いた調整後の営業利益が前期比2倍近くの185億円と好調。連結営業損益が赤字となったのは、スマートフォン決済「メルペイ」事業や、米国フリマ事業が要因と言える。

メルペイの利用者数は20年6月期で700万人超だが、NTTドコモやKDDIなどの携帯通信大手が展開するスマホ決済は軒並み2000万人以上だ。メルペイが機能強化を進めても規模面での巻き返しは容易でない。

【連結業績注視】

ラーゲリン取締役は米国ではベンチャーの上場や企業間のM&A(合併・買収)が多いことなどを念頭に、「日本と比べて競争環境の変化は激しい」とみる。目先の収益よりも柔軟性を重視して投資を続ける姿勢は納得できるが、連結業績への貢献も重要だ。ラーゲリン取締役のバランス感が問われ続ける。

日刊工業新聞2020年9月7日

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メルカリ 新型コロナ

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