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居住用の投資物件、コロナ禍でも需要堅調のワケ

都内の不動産業者から意外な話を聞いた。居住用の投資物件の需要が底堅いという。新型コロナウイルスによる経済減速で個人の住宅購入には急ブレーキがかかった。しかし貸し付け用の1棟アパートやマンションに関しては、投資家の意欲はあまり変わっていないらしい。

店舗やホテル、オフィスなどの打撃の半面で、居住用不動産はコロナ禍でも極めて安定している。ただ基本的には低収益なので、自己資金や追加担保がなければ金融機関の融資が通らない。

こうした投資が底堅い背景に、政府のコロナ対策融資があるという。月次売上高の減少など一定の要件を満たせば、個人なら8000万円、中小企業なら6億円までの無担保・低利融資が受けられる。当初3年間は一部が無利子になる。

むろん、借りた資金を何に使うかは審査時にきちんと説明する必要がある。目的外使用と判断されれば融資取り消しもあり得る。

ただテナントビルやホテルのビルのオーナーが、長期安定収益を狙える居住用物件にシフトするなら融資対象だ。専業でなくとも不動産賃貸を兼ねている企業ならチャンスがある。中小・零細な事業者が活路を開く方法としては、あり得る話ではないか。

建物の新築実需が生まれれば、建築業者や設備メーカーの仕事になる。景気を底上げする政策としても、間違ってはいない。

実際には少数の例なのだろう。しかし苦境を耐え忍ぶだけでなく、ピンチをチャンスに変えようとする中小事業者がいることにたくましさを感じる。

モノづくり企業に対しては、融資支援だけでは不十分なのかも知れない。政府には、そうした視点で細かな目配りをお願いしたい。

日刊工業新聞2020年3月31日

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