分かれる「5G」戦略、ドコモが周波数転用に慎重なワケ

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5Gエリアの広さを重視する人も多い(イメージ)

携帯通信大手3社の間で、第5世代通信(5G)ネットワークの展開戦略が分かれている。KDDIとソフトバンクは、第4世代通信(4G)向けの周波数帯を5Gに転用することで、5G基地局の早期整備を図る。一方でNTTドコモは当面、5G用に割り当てられた新周波数の活用を重視。4G周波数による5Gサービスの通信速度は4Gと同等のため、優良誤認を招く恐れがあるとも指摘する。戦略の違いが今後の顧客獲得にどのような影響を及ぼすか注目される。(斎藤弘和)

【来月制度改正】

「ドコモとしては消費者保護のため、優良誤認にならないようにしたい」―。25日に同社が開いた記者説明会で中南直樹ネットワーク部技術企画担当部長はこう強調した。

総務省は9月前半をめどに、4G用の周波数帯を5Gに転用できるよう制度改正を行う見通しだ。KDDIとソフトバンクはこれを活用し、両社とも2021年度末までに5G基地局を5万局整備する方針を掲げる。一方、21年度末時点におけるドコモの5G基地局数は2万局の計画。この中には、4Gから転用される基地局は含まれていない。

【消費者へ周知】

ドコモが周波数の転用に慎重なのは、従来の4Gと同等の通信速度しか見込めないためだ。5G向けに割り当てられた新たな周波数では、4G以前に利用していた周波数に比べて幅の広い帯域を使えるため、高速・大容量通信が実現する。しかし4G周波数による5Gは周波数の幅が変わらず、新周波数ほどの速度は実現しない。

これを踏まえドコモは、新周波数による5Gと、4G周波数による5Gを地図上で分かるように消費者へ周知すべきだと主張する。仮に両者をまとめて5Gエリアとして表示すると、消費者はその範囲内ならばどこでも5Gならではの高速・大容量通信が使えると認識してしまうような優良誤認の恐れが出てくるとしている。

ドコモは吉沢和弘社長も以前からこうした見解を表明しており、KDDIやソフトバンクは、周波数帯の転用で5Gエリアを一気に広げる戦略をけん制された形とも言える。ただ両社は制度改正がされれば使いたい意向を示しているだけで、実際に優良誤認があったとは考えにくい。ソフトバンクの関係者は、「(ドコモの情報発信の結果として)我々が消費者に告知不足であるような印象を持たれてしまうかもしれない」と不快感を表す。

【エリアを重視】

消費者保護や高速通信を重視する姿勢は、一定の共感を集めるだろう。一方で速度はどうあれ、5Gエリアの広さを重んじる人も多いとみられる。ドコモは4Gを5Gに転用するための制度改正自体には賛同しており、4G周波数による5Gの展開も検討する方針。ただ実現時期は明言しておらず、少なくとも20年度中の対応は行わないもよう。今秋以降は5Gスマートフォンの新製品も相次ぎ登場する見込みで、携帯通信3社の競争激化は必至だ。各社の顧客獲得の状況が注目される。

日刊工業新聞2020年8月26日

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