<特集>中部のモノづくりはなぜ強いのか#02
伝統技術が現代に継承
若手技術者の育成にも注力
中部のモノづくりは、歴史的な積み重ねによって発展を遂げてきた。ただ、技術は常に次世代へ継承されていかなければ、間違いなく衰退の道を辿る。これまでは、各種技術が新たな世代へ確実に継承され、進化を遂げることができた。
しかし今日、少子高齢化によって労働力人口が減少する中、技術をいかに継承していくかという課題に各業界・企業は直面している。特に中小企業においては、技術を持つベテラン社員の退職、技術を受け継ぐ若手人材確保の遅れにより、技術の継承が途絶えて深刻な状況に陥っているところも少なくない。
そんな中でも技術の継承に積極的に取り組み、優秀な技術者の育成に力を注ぐ企業もある。その一端が、技能五輪の結果から見て取れる。技能五輪とは、青年技能者の技術レベルを競う競技会で、毎年全国大会、さらに隔年で国際大会が開かれている。ここでは製造業を中心に、40を超える職種で技が競われる。全国から選りすぐりの若手技術者が集まる中、毎年注目を集めるのが中部からの出場者だ。
技能五輪、41種目のうち中部の技術者が13種目で金メダル
2014年11月から12月にかけて行われた第52回技能五輪全国大会では、全41種目のうち13種目で中部の技術者が金賞を勝ち取った。入賞者は全体で442人。うち134人を中部勢が占めている。その割合は全体の約3割。若手技術者の多くがこの地区に集まっていることがわかる。トヨタ自動車やデンソーといった、教育に注力する余力を持った大企業の割合が高いのは事実だが、中小企業の技術者も決して例外ではない。
その一例が、タイル張りで銀、銅を獲得した菅沼タイル店(愛知県岡崎市)だ。ここは社員数30名に満たない規模の小さい企業ではあるが、若手の育成に投資を惜しまない。若手社員の技能向上を、会社が全面的にバックアップしている。教育にかかる負担は決して軽くない。
しかし、それ以上に優秀な技術者の育成が会社のみならず、若手社員自身、さらには日本のモノづくりの飛躍に繋がるとの信念を持ち続けている。その結果、今では技能五輪入賞の常連となっている。こうした各企業の努力が優秀な若手技術者を育成し、技術を継承することによって、今なお中部のモノづくりは強さを維持しているのだと言える。
※次回は10月17日公開予定
日刊工業新聞2015年10月15日「モノづくり中部の鼓動 技、一路」より