1分喋るなら30分の内容を用意しろ!人気エコノミストのコメント力を磨く秘訣

伝わる言葉 伝える技術 #6

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マクロ経済の動向を示す統計が毎日のように発表されるが、その内容を理解するのは簡単ではない。経済の専門家がテレビなどでコメントする際に何を意識しているのか、専門領域をわかりやすく伝えるコツはあるのか。人気エコノミストに秘訣を聞いた。(栗下直也)

―討論番組から報道番組まで幅広く出演されています。話す際に気を付けていることは。

「事前の準備だ。徹底的に調べて、ひとつの事象を複数の角度から考えたり、俯瞰して眺めたりして、本質は何かを考える。テレビのコメントは表面的になりがちなので、なぜこの事象が起きているか、何が重要かをひたすら掘り下げる。そうすることで、それまでに無い、価値のある切り口も示せる」

「番組で喋るのはひとつの議題について1分や1分半程度だが、30分は話せる内容を用意して、そこからふるいにかけている。コメントも一種類だけでなく、違う角度から複数用意する。それらを全部俎上に載せて、どれが最も効果的か考える」

「徹底的に準備するが、番組の収録時には(それを資料などにして)見ない。型にはまらず、番組が始まったら、流れに任せる」

―テレビは視聴者層も幅広いですが、情報の受け手の対象を設定して話されていますか。

「知識が無い方にもわかるように専門用語を使わずに基礎から説明している。同時に、知識がある人にも気づきを与えられるように心がけている。伝える相手をどちらかに絞らずに両者を満足させたい」

―「切り口」が浮かばずに悩んでいる人も多いと思います。

「情報を整理して、ロジカルに伝えようとしても、まず、インプットが無ければならない。全国紙や英字新聞、雑誌はもちろん、テレビも放映されているニュースや討論番組は全て録画して、まとめてチェックしている」

「本は専門と異なる分野を意識的に読む姿勢が重要だろう。専門分野は知っていることが多い。異分野にこそ、気づきがある」

―インプットして、適切にアウトプットすることで、よい循環が生まれるわけですね。

「エコノミストの仕事は好循環を生み出せるかにかかっている。有効なアウトプットには伝える相手が何を知りたいか把握することが欠かせない。ニーズを捉えて喋るのは当たり前に聞こえるかもしれないが、多くの人が喋りたいことを喋っている。相手が知りたいことを伝えるようになると、情報も入ってくるようになる。情報発信もプロダクトアウトではなくマーケットインの発想が必要だ」

【略歴】89年東大法卒、同年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2007年大和総研入社、20年現職。東大大学院法学政治学研究科修了。ハーバード大経営大学院AMP修了。近著に『ポストコロナの経済学』。

日刊工業新聞2020年8月13日

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COMMENT

栗下直也
デジタルメディア局
編集委員

テレビでもよくお見かけする熊谷氏がここまで徹底的に準備をしているのは意外でした。

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