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病気は「保障から予防」へ、生保業界でプリベンション商品が相次ぐワケ

生命保険業界でプリベンション(予防)領域の商品・サービス開発が相次いでいる。これまでは病気など万が一のリスクに経済的に備えるプロテクション(保障)の側面が強かったが、発病予防や早期発見ステージの取り組みを拡大した形だ。予防領域の深化で、顧客のQOL(生活の質)向上につなげる。

日本生命保険や第一生命保険は、糖尿病予防の研究開発に注力している。糖尿病は合併症を引き起こす恐れが高く、予備軍も1000万人程度いると推計されている。食習慣の改善などで重症化を防ぐことができれば、43兆円に迫る医療費の抑制にも役立つ。

日本生命の場合、連携を結ぶ地方自治体などから約1000人がトライアルに参加。約7割で血糖値の減少を確認できた。発病に至っていない未病は従来の保険でカバーできないため、保険商品の補完プログラムとして7月に外販を始めた。

明治安田生命保険や住友生命保険などが販売している健康増進型保険も、予防領域に関連する商品の一つ。同保険は健康診断結果や日頃の運動をポイント化して保険料を割り引く仕組みの商品。加入者が健康維持に励む程、保険料を節約できる。

健康増進型保険は健康診断結果を保険料設定の指標とする商品が多い一方、住友生命の「Vitality」は毎日の歩数など日々のプロセスを重視している。新型コロナウイルスの感染拡大で不要不急の外出自粛が要請された期間は、ポイント取得に関する特別取り扱いを実施したほか、自宅で楽しめる運動コンテンツを充実させるなど柔軟性を示した。

太陽生命保険は、疾病予防などを専門的に調査研究するシンクタンクを4月に設立したほか、SOMPOひまわり生命保険は健康関連商品の拡充などで、保険料等収入に占める予防領域の比率拡大を目指している。新型コロナ感染拡大は消費者の健康不安や健康意識を高めたとの指摘がある。プリベンション領域での保険商品や新規サービスは開発余地が大きく、今後も業界全体で盛り上がる可能性が高い。

日刊工業新聞2020年7月31日

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