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GEが狙う60兆ドル「産業用アプリ経済」とは

コンシューマー・アプリの「規模」はやがて小さく感じられるようになる

250万人のソフト開発者が共通のプラットフォームを使う


 これは始まりに過ぎない。インダストリアル・インターネットはいまPredixという(産業機器用の)OSと、そのクラウド・インフラであるPredix Cloudを備えている。これが共通プラットフォームとなり、ソフトウェア開発者はそこであらゆる種類の機器の効率や可用性、信頼性を向上させるための新たな方法を試すことができる。

 全世界に分散しながらも繋がり合う何百万人もの知能「グローバル・ブレイン」のパワーを活用するには、こうしたプラットフォームが不可欠。世界には、すでに250万人近くのソフトウェア開発者が存在している。この分野には極めて多くの知力が注がれており、それが、人々の暮らしのあらゆるシーンにアプリが浸透している理由だ。

 コンシューマー・アプリは私たちの生活を便利に変えてくれただけではない。大量の経済的価値を生み出しているのだ。世界のアプリ経済は昨年27%成長し、来年には1,430億ドル(約17兆1600億円)規模に達するだろうと見られている。

 これは印象的な数字だ。しかし、これも今まさに台頭しつつあるインダストリアル・アプリ経済に比べれば、やがて小さく感じられるようになるだろう。インダストリアル・アプリは、世界の経済成長のエンジンの役割を果たしている産業分野、すなわちエネルギー・医療・運輸などの全領域で、すでに世界のインフラを支え稼働している膨大な物的資産を活用し、経済価値を生み出す。産業分野は今、世界の経済生産の3分の1を占めている。インフラ投資は15年以内に60兆ドルを超すと見込まれている。

 インダストリアル・アプリは、経済のあらゆる側面に新たな効率性をもたらしてくれるだろう。それにより私たちは、エネルギー産業を大きく変化させながら、再生可能な資源からより多くのエネルギーを生産し、それをより効率的に使用できるようになる。

 また、医療の質は高められ、医療費はより手の届きやすい水準へと引き下げられるでしょう。そして、病院や空港の遅延時間も短縮されるはずです。また、インダストリアル・アプリは3Dプリントなどの新しい製造技術と相まって、新興経済国での雇用を創出し、成長を促進し、新たな地域での製造活動の発展に役立つものと思われます。私たちの暮らしに及ぼす影響は、はっきり認識できるものではないにせよ、コンシューマー・アプリによる影響よりも大きなものになるでしょう。

 <成長のカギは産業分野にまたがって適応する相互接続性と互換性>

 産業用アプリを異なる産業分野にまたがって適応したり“移植“できるようにするためには、相互接続性と互換性を持たせることが重要であり、それがまさに、産業界でのアプリ経済成長の鍵になる。

 航空機群の管理を最適化するアプリを、船舶群や機関車群の管理にも容易に適用できるようにする必要がある。これはアイデアやソリューションの産業分野の壁を越えた共有や交流を促し、インダストリアル・インターネットを発展させ各界の”効率性“の向上を加速するきっかけとなるだろう。

 インダストリアル・アプリ経済は、コンシューマー・アプリ経済よりはるかに大きな経済的影響力を発揮しながらも、同時にいくつかの重要な面で異なる特徴を見せる。非常に単純なアプリの場合、インダストリアル分野では極めて限定的な範囲での適用になるはず。産業機械のアプリは堅牢で安全でなければならない。工業レベルのデータ量を処理する能力が必要だ。またデータを保護し、工場設備やインフラとの干渉を回避するため、最高水準のサイバーセキュリティを備える必要がある。

 経済発展は常に人と機器によって実現されてきた。いま、イノベーションは加速の度を強め、それに伴って機器も人もこれまでにないほど賢くなり、やることが高効率になり、相互補完し合うようになっている。経済発展は、人と機械の共生関係によってますます加速される。インダストリアル・アプリは、人間と機機が共働するためのインターフェイスと共通言語を提供し、それが、仕事の質の向上と、より良い生活水準へと繋がる。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
GEがOSや接続規格なのでデファクトをとります!という宣言。現実味は高いが日本勢はようやく役所、産業界で話し合いましょうという感じで、それでは負けるのは当然。

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