飛行船のノウハウで生まれた、国内最大級のテントが面白い

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空気で膨らませるインフレータブルテントとしては国内最大規模のサイズ

エイ・イー・エス(AES、東京都中央区、吉田忠彦社長、03・5255・7860)は、災害時の緊急避難施設などに活用できる空気膨張式テント「インフレータブルテント」を開発した。空気で膨らませる方式のテントとしては国内最大級のサイズを誇る。基礎工事が不要で、テニスコート約1面分の広さの安全な空間を速やかに作り出せる。避難施設のほか、損壊した家屋の応急処理資材など、さまざまな用途が想定されている。

「広さだけでなく天井の高さもあり、とにかく大きな空間を確保できる」。AES筑波事業所(茨城県つくば市)の松本紘明プロダクトデベロップメントディビジョン部門長は同テントの特徴をこう説明する。

【入浴施設など】

膨らませたテントの外回りのサイズは幅14・5メートル、奥行き29・4メートル、高さ11・5メートル。内部は床面積が220平方メートル、天井までの高さは9・5メートル。災害時の避難施設として活用する場合、広さを利用して、入浴施設を設置するといった使い方が想定できる。

もうひとつの特徴が迅速に設営できる点だ。テントを張る際に金属の骨組みの設置などは不要。送風機で膨らませる作業を20分程度で完了できる。テントは四つのユニットに分解でき、一つのユニットの重さは約70キログラム。折りたたんだ状態のテントを、大人が数人で持ち運べる。準備作業を含めると3―4時間で設営できるほか、撤去作業も容易になる。

また、「風で簡単に吹き飛ばされることもない」(松本部門長)。風速10メートル以上の強い風が吹く時には使用できないが、それ以下であれば持ちこたえられる程度の強さを確保している。

内部は床面積が220平方メートル。高さは9.5メートルの広い空間を確保

AESは小型衛星の開発・製造、宇宙ステーション関連試験設備の運用などを手がける。環境観測向けの飛行船や気球の設計・製造を1986年の創業初期から手がけており、今回のテントは飛行船や気球に使われる膜材料のノウハウを応用して開発した。元々は、飛行船を一時的に格納する用途として開発したが、屋外イベント会場や災害時の避難施設の設営など多くの場面で応用が見込めるため、外販に着手した。

【膜材料に強み】

ここまで巨大なテントを製作できる最大の理由は、その膜材料にある。膜材料の詳細は「企業秘密」としているが、「アウトドア用品の一般的なテントの素材よりも圧倒的に軽く、強度にも優れた膜材料」(同)を活用しているという。AESは、その膜材料を接合したり、さまざまな形状に加工したりする技術に強みを持つ。そのため、テントを大型化するだけでなく、サイズや形状、色などを自由に作り出すことが可能だ。

膜材料の加工技術を応用することで、災害時の応急処理資材への活用も期待できる。例えば、台風で屋根や窓ガラスが吹き飛ばされた家屋を保護するような用途が想定される。松本部門長は「テントの加工は社内の設備で対応できる。顧客の要望に応じてオーダーメードで提供していきたい」と話している。(取材=茨城・陶山陽久)

日刊工業新聞2020年7月6日

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