カンボジアの道を作る。中小企業の「途上国開拓」論

  • 0
  • 2
土壌硬化剤を混ぜたセメントを1割ほど土に混ぜ、ならして、締めて水をやると固まる

SPEC(東京都杉並区、久保祐一社長)は、久保金属(同杉並区)と松村綜合科学研究所(北海道旭川市)の合弁ベンチャー。土を固める土壌硬化剤を手がける。同剤は農道や水路、堤体などの整備に使われる。日本では主に1970―80年代に使われた技術だが、発展途上国でコストや施工の簡便さが再評価された。久保金属の社長を兼務する久保社長に中小企業の途上国開拓について聞いた。(聞き手・小寺貴之)

―SPEC設立のきっかけは。
「メッキ工場の廃液など、重金属の封じ込め技術を探していた時に松村綜合科学研究所と出会った。同技術は土の中の金属成分を固めて封止する。日本でも昔は、道路整備に広く使われていた技術だ。現在も農道や水路の防草に使われる。日本の道路は基礎を作り、アスファルトを敷くことが当たり前になったが、途上国では土を固めるニーズがあると考え、両社の折半出資でSPECを設立した」

―中小企業が途上国を開拓するのは簡単ではありません。
「国際協力機構(JICA)の普及実証事業に採択され、青年海外協力隊出身の若手女性社員を中心にカンボジアで実証している。土やコンクリートの道に比べメンテナンスを含めて半分程度の費用で道を作れる。ビジネスモデルとして日本から硬化剤を提供するモデルと、現地で硬化剤を加えた土壌材を作るモデル、道路などを造る施工会社を設けるモデルなどを検討している。最も稼げるのは施工だ。公共工事は現地政府との関係づくりが大切。国によって変わるが、現地のパートナー企業が最も恩恵を受けるモデルを選びたい」

―JICAの事業に採択された経緯は。
「東京都中小企業振興公社に助けてもらった。海外販路開拓支援の方がカンボジアのインフラ状況に精通されていて採択につながった。ため池の護岸保護では農業・食品産業技術総合研究機構に耐久性を検証してもらっている」

SPEC社長・久保祐一氏

―今後の見通しは。
「協業戦略の手腕が問われるのはこれからだ。我々は大企業と異なり、必ずしも大きな売り上げを狙わなくてもいい。現地パートナーの事業が持続可能になることが第一だ。日本では硬化剤の提供で堅実に黒字化し、途上国のインフラ整備に貢献したい」

【チェックポイント/パートナーの利益第一】
公共工事は現地企業が強固な地盤を築いている。日本の中小企業が割って入るのは簡単ではない。そこで現地パートナーに最も利益が落ちるモデルを描いて協業を持続可能にする。農道や水路などの細かなインフラ整備は大企業にとって事業規模が足りないが、中小企業なら勝負できる。青年海外協力隊出身の若手社員が現地の生活改善を志し、根を張った活動ができる。協業で生まれたベンチャーが海外との協業で販路を開こうとしている。

日刊工業新聞2020年6月16日

COMMENT

小寺貴之
編集局中小企業部
記者

枯れた技術を途上国に輸出する。これは持続可能な国際貢献なのか、途上国向けのテックビジネスなのか、面白いチャレンジになると思います。公共工事は地元が強いのは当たり前で、人脈や利権も複雑に絡み合っています。大きな売り上げを海外企業がもっていくビジネスモデルは嫌われますが、中小企業なら利権の中にピタリとはまる連携モデルがあるはずです。

関連する記事はこちら

特集