どうなる日本メーカーのディーゼル車戦略
本当にクリーンなの?という疑いを払拭できるか
進化支える日系部品メーカー
欧州完成車メーカーを中心に技術開発が進んだディーゼル技術だが、部品レベルでは日系サプライヤーも技術の進化に寄与してきた。ディーゼルエンジンを劇的に進化させた技術にコモンレールシステムがある。高圧の燃料をレール(蓄圧室)内に蓄え、電子制御によりインジェクターからエンジンの各気筒に噴射する。タイミング良く高精度に噴射することで、窒素酸化物(NOX)低減など環境性能を改善できる。
デンソーは1995年に世界で初めてコモンレールシステムを実用化。その後も技術革新を進めた。その一つが噴射する燃料を微粒にするための高圧化だ。当初は最大120メガパスカルだったが、13年には250メガパスカルのシステムを開発。従来の200メガパスカルに比べ燃費を最大3%以上低減。NOXは同8%削減し、粒子状物質(PM)は半減した。
高圧化とは別に、同社が開発を進めてきたのが「i―ART」。コモンレールシステムをいわば「賢く」する技術で、各インジェクターに圧力センサーを内蔵し、噴射量やタイミングを高精度に制御する。理想とする噴射との差異をフィードバックし、10万分の1秒単位で制御できる。12年に実用化し、乗用車向けではスウェーデンのボルボ・カーズの新型ディーゼルエンジンに初めて採用された。
コモンレールシステムの燃料噴射管を生産しているのが臼井国際産業(静岡県清水町)。商用車を含む完成車メーカーからの評価が高く、世界シェア約5割を握る。独自の塑性加工、熱処理、内面平滑化技術を駆使し、世界最高水準の耐圧性能を実現。250メガパスカルを超えるシステムに対応した噴射管の開発も完了するなど業界をけん引する。
日本ガイシは独フォルクスワーゲン(VW)を含む世界各社に、PM除去フィルター(DPF)や触媒担体、NOXセンサーなどを納入。ポーランドにDPFの第2工場を建設し、17年1月に稼働させる方針だ。自動車エンジン用すべり軸受大手の大同メタル工業は、欧州大手自動車メーカーを中心にディーゼル車向けの軸受を供給している。
VWのディーゼル不正問題を受け、各社は販売影響など情報収集を急ぐ。日本ガイシはポーランドのDPF第2工場について「現時点で建設計画に変更はない」(広報室)とする。大同メタル工業は「取引先は幅広く、ディーゼル車の販売が振るわなくてもガソリン車が伸びて相殺する可能性がある」と必要以上に懸念はしていないものの、欧州の販売代理店を通じて情報収集を進める。
ディーゼル技術は日本の部品メーカーが大きな役割を担っている。仮にディーゼル不信が世界で広がれば、部品メーカーや部材を供給する日系の中小メーカーにも影響する可能性がある。VW不正問題の余波がどこまで及ぶのか、ディーゼル車の行方を注視しなければならない。
2015年10月2日/5日/6日の記事を再編集