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日本人ICCTメンバーに聞く。VW不正のメカニズムと規制の行方

大聖泰弘早大教授「(自動車メーカーは)触媒機能を強化したり、エンジンの制御を厳しくする必要がある」
日本人ICCTメンバーに聞く。VW不正のメカニズムと規制の行方

「台上テストだけでは無効化装置は見破れない」と大聖氏

 独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題が波紋を広げている。不正発覚のきっかけとなった国際非営利団体、国際クリーン交通委員会(ICCT)のメンバーであり、長年ディーゼルエンジンを研究する早稲田大学の大聖泰弘教授に、不正の仕組みや排ガステストのあり方について聞いた。
 
 ―不正発覚の経緯は。
 「欧州で排ガス規制が強化されたが大気汚染が改善しない。このため欧州では、試験場で行う台上テストだけでなく、実際の道路を走行して排ガスをテストする方法を取り入れる動きがある。その一環でICCTが米ウェストバージニア大学に調査を委託し、米国でVWのディーゼル車を実走行したらNOXが規制値を大幅に超えた。それが発覚につながった」

 ―問題の車両は「ディフィートデバイス(無効化装置)」を使っていました。
 「一般にNOXの排出量を抑制しようとすると、すすの排出量が多くなり、燃費も悪化する。NOX対策をせず、すすの排出を減らして燃費を改善するのが無効化装置の狙いだ。台上テストではハンドルを動かさない。悪質なのはそれを装置が認知して台上テストの時だけNOX対策を無効化していることだ」

 ―VWはなぜ不正をしたと思いますか。
 「VWは世界販売の拡大を狙っていた。特に米国の販売は苦戦していた。ディーゼル車はコストが高く、販売後の不具合時のコストもかさむ。VWは大衆車に強みがあり、コストが高くできないことも背景にある」

 ―排ガステストのあり方に疑念が生じています。
 「排ガス測定装置を車両に搭載し、実際に道路で走行している状態でテストする方法が有効だ。『RDE』という手法で欧州では2017年に導入される。世界で排ガス試験法を統一する動きもあり、不正はしづらくなる傾向にある。ただ台上テストでやる限り無効化装置は見破れない。台上テストとRDEを組み合わせるのが望ましい」

 ―RDEは各地に広がっていますか。
 「まだ欧州だけしか導入が決まっていない。今回の不正問題で加速するかもしれない」

 ―メーカーの負担が増えそうです。
 「排ガスを浄化する触媒機能を強化したり、エンジンの制御を厳しくしたりしなければならない」
(聞き手=池田勝敏)
日刊工業新聞2015年10月06日 3面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ドイツ検察当局は、証拠不十分でVWのヴィンターコルン前CEO氏への捜査は行っていないことを発表した。では誰が主導したのか。今回は、ディーゼルエンジンを制御するソフトウエアに不正なものを使ったとされる。クルマの電子化が進み、電子制御ユニット(ECU)の搭載数が100個くらいになって、すでにソフトウエアが自動車の機能を決定つけている。機械系と電子系の開発部門はもともとは別物で、特にソフトの部分は内部でもブラックボックス化されやすい。これを契機に、クルマづくりの発想を大きく変えることにつながるかも。

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