新方式の“緩まないネジ”開発!3つのナットで強力な締結を実現
キー部品は異形鉄ナット
貴匠技研(山梨県笛吹市、鈴木貴文社長、0553・47・0827)は、三つのナットの組み合わせからなる新方式の緩み止めネジ(ボルト)を開発した。内側側面に傾斜(テーパー)をつけた二つのナットの中間に、三つ目の異形ナットを挟み込んで締め上げることで、振動にも緩まない強い締結力を得られる仕組み。鉄塔や橋梁向けなどとして、いつでも量産開始が可能。ライセンス供与によるビジネス展開も計画する。
3ポイントネジは内側面の外向きに11度のテーパーを付けた同形状のステンレス製2ナットと、同中間に入る異形の鉄ナットが緩み止めとして機能する。ボルトは一般的な規格品を利用できる。山梨県内の公的な工業試験所で行った日本産業規格(JIS)に基づく振動試験はM16サイズのボルトを使用し、締結トルク186ニュートンメートルと84・3ニュートンメートルで2通り行った。その結果、「84・3ニュートンメートルの締め付け状態でも、16分40秒間の振動試験で全く緩まないことが実証された」(鈴木社長)という。
強力な締結力を実現するキー部品となるのが3ナットの中間に入る異形鉄ナットで、上下方向の周囲内向きに11度のテーパーが付き、リングには切れ込みが入った形状となっている。これが、ステンレスナットとネジ山のスタート位置が異なることにより締結時に生ずる「ズレによるネジ山同士の側圧」と、「鉄ナットに切れ込みが入っていることで、締結時には直径0・4ミリメートルほど内側にたわむ」ことで生じる締め付け力を利用。
さらにステンレス製2ナット同士の面厚で生じる締結力が加わり、3ポイントでの耐振動性が確保できる仕組みだ。鈴木社長は「量産が容易で、既存の緩み止めボルトに比べ大幅な低価格化が可能」としている。
日刊工業新聞2020年6月8日