食品スーパーの主戦場は「小型店」へ、狭くても“惣菜力"で勝負
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は首都圏のスーパーマーケット(SM)事業を強化する。グループ傘下のヨーク(旧ヨークマート)が、首都圏の需要に合わせた四つのフォーマット(定型)を基本に、新戦略店舗「ヨークフーズ」の出店、既存店の再編を進める。今後、イトーヨーカ堂の食品事業との連携によるサプライチェーン(供給網)の効率化などにより、2024年度に営業利益率3%の達成を目指す。
「大きな首都圏の市場で店舗数を増やし切れていない」。石橋誠一郎常務執行役員グループ商品戦略本部長は、セブングループのSMの課題をこう明かす。理由はいくつかあるが、首都圏の顧客ニーズを満たす店舗フォーマットが見いだせていなかったことなどが要因だ。
このため、店舗面積が2000平方メートルまでの標準型、500―1000平方メートル弱の小型などのフォーマットを作成、新たなマーチャンダイジング(MD)も取り入れた。「標準型」として5月13日に開業したヨークフーズちはら台店(千葉県市原市)は、店内のオープンキッチンで調理した魚総菜や手作りサラダのほか、共働きの多い地域のニーズに合わせて冷凍食品売り場を従来比1・5倍に広げた。
また19年7月にヨークマートを改装オープンした「小型店」の中町店(東京都世田谷区)も魚総菜などを充実させる工夫で、3月の売上高は前年同月比で27%増となった。ただ店内調理といったインストアについては、将来的には人手不足を考慮し、一極集中で調理することで生産効率が上がるセントラルキッチン(集中調理施設)も見据えている。
こうした動きは、新型コロナウイルス感染拡大以前から収益を上げている成城石井、小型店で店舗数を拡大している、まいばすけっとなど競合他社も取り組んでいる。
ローソン傘下で首都圏を中心に展開する成城石井は、一流料理店出身のシェフがレシピを作ったオリジナル総菜や食肉加工品を東京都町田市のセントラルキッチンで製造する。SMが基本とする生鮮3品にこだわらず、駅ナカなどわずか130平方メートル程度の場所にも出店。通勤客のニーズを掴み、20年2月期の営業利益は前期比11・4%増の91億円と3年連続の増益となった。
イオン系で都市型小型スーパーのまいばすけっとも、狭い場所を有効活用し、出店を加速。前年に比べて19年2月期に85店増、20年2月期に81店増と店舗数を拡大している。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、SMの多くは食品の売上高を伸ばしたが、各社が首都圏攻略を進めており、需要や消費の変化にいち早く対応できる店だけが生き残る様相を呈している。
(取材・丸山美和)