宇宙の謎に挑む「スーパーカミオカンデ」、500人の実験グループを率いる女性科学者とは?

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岐阜県飛騨市にあるスーパーカミオカンデ

「女性科学者に明るい未来をの会」(東京都豊島区)は、自然科学分野で優れた研究業績を収めた女性科学者を表彰する「第40回猿橋賞」を京都大学大学院理学研究科の市川温子准教授(49)に贈ることを決めた。研究テーマは「加速器を用いた長基線ニュートリノ実験によるニュートリノの性質の解明」。ウェブによる記者会見で発表された。市川さんは「一緒に研究してきた人たちのおかげで受賞できた。感謝したい」と喜びを語った。(飯田真美子)

素粒子の一種であるニュートリノの性質を解明する国際共同研究を進める。茨城県にある大型加速器で生成したニュートリノを岐阜県にある観測施設「スーパーカミオカンデ」に向けて飛ばし、検出までの間にニュートリノの種類が変化することを明らかにした。

より詳細な研究をする「T2K実験」の施設の設計や建設、実験データの解析などに貢献。現在は約500人からなるT2K実験グループの代表を務める。研究を進めることで、現在の宇宙には初期に生成されたはずの「反物質」が存在しない謎に迫れる。宇宙の成り立ちを解くカギになると期待される。

学生のころから理科が好きで「高校生になると物理学が面白くなり、京大理学部に入学したことが研究者になるきっかけ。物理学の中でも理論の勉強よりも、機械いじりなどの実際に手を動かして実験する方が好きで自分に向いている」と感じていた。家族から猿橋賞という賞があることを聞き、「いつか自分も受賞したい」と思っていたという。

京大理学部博士後期課程を修了後にニュートリノの研究を開始。「身の回りに多く存在するが、捕らえることが難しいところに惹かれた」と目を輝かせた。ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊東京大学特別栄誉教授や梶田隆章東大宇宙線研究所所長とも接点があり、「ニュートリノの研究者はストイックな人が多く、研究への姿勢など影響を受けた」と話した。

現在は国際共同研究グループの代表を務める。さまざまな国から研究者が集まっているため、文化の違う人たちとの仕事は大変な面もあるが「発想や考え方など日本人と違う感性を持っているため、できることも増えてくる」と笑顔を見せた。研究室の雰囲気を明るくし、全員で同じ目標に向かって進んでいることを伝えるようにしているそうだ。

今後は検出器の感度を上げた実験や新たな検出器の導入など、研究グループの仲間の研究をきちんと進めるための環境作りに注力する。

ウェブ記者会見に出席した京大の市川准教授
【略歴】いちかわ・あつこ 01年(平13)京大院理学研究科博士課程修了、同年日本学術振興会特別研究員。02年京大教務補佐員、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所助教。07年京大准教授。愛知県出身、49歳。理学博士。

日刊工業新聞2020年5月26日

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