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日本電産から買収を仕掛けられたこともある新幹線用パンタグラフ国内トップ企業は?

文=清水秀和(証券アナリスト)東洋電機製造は、日立と鉄道電機品でシナジーを出せるか
日本電産から買収を仕掛けられたこともある新幹線用パンタグラフ国内トップ企業は?

日立の英国高速鉄道「IEP」向け車両


共同開発の第1弾「遮断器」、世界市場も見据える


日刊工業新聞2014年9月22日付


 日立製作所と東洋電機製造は、鉄道車両用の高速度遮断器を共同開発した。過剰な電流が流れた場合、その電流を遮断し、車両の主制御装置などを保護する重要な電機部品。これまで国内では海外メーカー製が多く使われていたという。両社の技術力を結集して巻き返す。日立と東洋電機製造は2010年に業務・資本提携を結んでおり、今回が具体的成果の第1弾。世界で鉄道システム需要が拡大する中、日本政府は輸出に力を入れており、車両の信頼性向上や効率化につながる電機部品でも日系企業の存在感を高める一つの契機になりそうだ。

 高速度遮断器は鉄道車両に搭載するVVVFインバーター装置(主制御装置)、補助電源装置を保護する部品。東洋電機製造は従来手がけているが、海外の鉄道電機部品メーカーが高シェアを握っていた。一方、日立は国際規格に対応した振動試験設備などを保有している。共同開発により、海外にも幅広く提案できる体制が整った。

 日立と東洋電機製造は11年7月に今回の共同開発を企画し、12年8月に最終合意。その後、約2年がかりで開発を進めてきた。1500ボルトの横置き、縦置きタイプの2機種と、750ボルトタイプの横置きタイプ1機種で、従来品に比べて遮断特性を高めた。製造は東洋電機製造グループが担当し、両社で国内や海外の鉄道事業者に売り込む。すでに量産体制は整っており、受注次第生産に入る。

 両社は10年10月に業務・資本提携で合意。鉄道システム大手の日立は東洋電機製造の発行済み株式の約4・3%を保有する。両社とも鉄道車両用の電機部品や関連システムの技術を有しており、補完関係にある。製品設計・開発や調達、海外事業など複数分野で連携を模索し、今回初の成果が出たことで今後の連携強化に弾みが付く公算は大きい。
日刊工業新聞2015年10月01日 金融面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東洋電機製造は08年に日本電産からTOB(株式公開買い付け)をしかけられたが拒否。その後、10年に日立と資本・業務提携した。当初は安定株主対策が色濃いようにも思われたが、共同開発品も生まれ少しずつ「実」も出始めている。日立と提携交渉の前線にいたのが、現在の寺島憲造社長(当時専務)。車両メーカーの世界再編が進む中で、電機品メーカーの再編も考えられる。

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