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新型コロナで要件緩和、「雇用調整助成金」の支給額は?

知って損なし! 雇用調整助成金(下)
新型コロナで要件緩和

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた特例措置として、雇用調整助成金の受給要件が緩和された。雇用調整助成金とは景気変動や産業構造の変化などに伴う経済的理由によって、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が一時的に休業などを行う場合に、休業手当や賃金などの一部を助成するもの。受給申請のポイントについて、社会保険労務士の安藤貴裕氏に解説してもらう。

(3)申請書類

記載事項や添付書類削減
【Q】特例措置ではどのような記載事項が削減・簡略化されますか。
【A】残業相殺制度の当面停止に伴い「残業時間の記載が不要」、自動計算機能付き様式の導入により「記載事項を大幅に削減」、日ごとの休業等の実績は「記載が不要(合計日数のみ記載)」などとなっています。申請書類の記載事項の削減や記載事項の省略・簡素化が図られ、添付書類は写しでも可能です。

【Q】提出が不要な書類などはありますか。
【A】計画届は休業実施後でも、6月30日まで提出できます。ただし、支給申請書提出時までに出す必要があります。また、計画届提出時に必要であった「休業・教育訓練計画一覧表」、「雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書」などが不要になりました。

【Q】添付書類はどうなっていますか。
【A】休業協定書の労働者個人ごとの委任状が不要になりました。中小企業の人数要件を満たしている場合、資本額を示す登記簿謄本なども不要。また賃金総額確認のための労働保険料概算確定申告書の添付も必要ありません。

【Q】月ごとの総勘定元帳や会社案内がないという会社もあります。

【A】生産物品の生産量、販売物品の販売量または売上高が分かる売上簿、営業収入簿、会計システム帳票など既存書類の写しでも可能です。また、出勤簿やタイムカードがない場合は手書きのシフト表、賃金台帳がない場合は給与明細書や手書きの帳簿でも可能です。

【Q】雇用保険加入者と未加入者で、提出する書類は異なりますか。

【A】申請は一緒にできますが、雇用保険被保険者用は(1)休業等実施計画届(2)事業活動の状況に関する申出書(3)支給申請書(4)助成額算定書(5)休業・教育訓練実績一覧表(6)支給要件確認申立書―が必要です。一方で雇用保険未加入者は「緊急雇用安定助成金」の対象となり、(1)―(6)の書類が別様式に変わるので注意が必要です。

計画書の提出・支給申請に必要な書類および添付書類など

(4)支給額と日数

中小助成率、最高10割
【Q】休業を実施した場合の助成額について。
【A】事業所の1人当たりの平均賃金(日額)に、休業等協定で定めた休業手当支払率60―100%をかけます。その金額に助成率最高10割をかけて助成額単価を求めます。また、雇用保険未加入者は、実際に支払った休業手当の平均日額に助成率最高10割をかけて助成額単価を求めます。この助成額単価(上限8330円)に休業延べ日数をかけた総額が助成額になります。

【Q】加算額が引き上げられるのは。
【A】教育訓練を実施した場合、通常1人1日1200円を加算しますが、4月1日―6月30日までは、中小企業2400円、大企業1800円を加算。管理職研修、ハラスメント研修など従来から実施すべき研修、さらにインターネットでの自宅訓練も対象になりました。研修は半日以上かつ3時間以上必要。また訓練同日の就労も可能になりました。

【Q】残業相殺制度を当面廃止するとは。
【A】休業する一方で休業していない日(稼働日)に残業した場合、その時間相当分は助成金の支給対象となる休業等と相殺されましたが、1月24日までさかのぼって対応し、6月30日まで残業相殺は当面停止されます。出勤日に残業する企業は助成金を活用できます。

【Q】支給対象となる期間、支給申請の期限は。
【A】支給申請の期間は、判定基礎期間末日の翌日から2カ月以内に行います。計画届を事後提出した場合は、計画届提出翌日から2カ月以内に行います。なお、計画や支給申請の単位となる判定基礎期間は、賃金締め切り期間ごとに区切られた期間となります。

【Q】支給日数については。
【A】支給上限日数は対象労働者1名当たりの上限イメージです。通常、1年間の支給上限日数は100日ですが、緊急対応期間に実施した休業は、100日の支給限度日数とは別枠です。延べ休業日数を労働者数で割って支給日数を計算します。

特例措置の助成率と支給限度日数

(5)休業の実施

初日から1年間助成対象
【Q】休業計画について教えてください。
【A】休業計画では、まず対象者の範囲(社員・パートタイマー・アルバイト)を確認し、休業日・時間を定めます。その際、休業規模要件をクリアする必要があります。休業手当は平均賃金または通常の賃金で支給する方法を検討します。その際、休業手当支払率を60―100%の間で何%にするか、人件費負担を試算します。

【Q】助成金の対象となる休業とは。
【A】申請した休業などの初日から1年間の対象期間内の休業になります。所定労働日の所定労働時間内に労働者を出勤させず休ませるものです。休業には全日休業または、短時間休業があります。

【Q】短時間休業とは。
【A】短時間休業は通常、事業所の対象労働者全員の一斉取得が要件ですが、休業初日が1月24日以降のものから6月30日までは一斉実施要件が緩和され、部門、店舗ごと、職種・仕事の種類ごと、同一シフト単位でも1時間以上の短時間休業が可能です。

【Q】支給対象となるには、休業について労使協定が必要と聞いています。
【A】なるべく早めに労使協定を締結します。1枚に数カ月分記載が可能です。毎月の休業予定日や、休業手当額を明記します。助成額の計算に使う休業手当率は労使協定に記載した率となります。手当の種類や職種などで休業手当の支払率を分ける場合、助成金額の計算には最も低い率が適用されるため注意が必要です。休業中の賃金について対象労働者にきちんと説明することが大切です。

支給申請までの流れ

日刊工業新聞2020年4月24日

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