新型コロナで運用方針に変化は?…生保各社の判断
生命保険各社は、不動産やインフラなどオルタナティブ(代替)投資を加速する。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年度の国内総生産(GDP)成長率が国内や欧米で軒並みマイナス成長が予想されるが、従来の運用方針をおおむね踏襲。金利や為替リスクとの相関性が低いオルタナティブ資産を増やす。(取材・増重直樹)
新型コロナ長期化でシナリオ崩壊も
国内主要生命保険9社の20年度資産運用方針が出そろった。新型コロナウイルスを念頭に置く運用方針が注目されたが、以前から下振れリスクを想定する資産負債総合管理(ALM)に基づく運用を実施しており、劇的な転換はなさそうだ。
日本生命保険の岡本慎一執行役員財務企画部長は「相対的に利回りの高い海外不動産やインフラファンドに個別銘柄を慎重に見極めながら投資する」と説明。海外現地法人が運営するファンドを通じた新規・成長領域の投融資を継続する。
第一生命保険も「収益力強化とリスク分散の観点からオルタナティブ資産の残高を着実に積み上げる」(甲斐章文運用企画部長)とベンチャーファンドや不動産などリアルアセットへ機動的に投資。一方で、市場要因の影響を受けやすい国内株式残高を減らす。
持続可能な社会に向けたESG(環境・社会・企業統治)投資も目立つ。明治安田生命保険はESG投資を含むサスティナビリティ投融資を強化するため本年度に専任組織を発足した。石炭火力発電事業への投融資を停止しており「責任投資」を一層推進する。
4月に3カ年の新中期経営計画をスタートさせた住友生命保険は22年度末までに3000億円のESG投融資目標を設定。社会インフラや再生可能エルネギー事業などへの投資を展開していく。
将来の経済環境に関しては、新型コロナウイルスのワクチン開発などで収束期待が高まり、20年度末にかけて緩やかな回復基調が続くとする予測が多勢を占める。ただ、富国生命保険の小野寺勇介財務企画部長は「最悪のシナリオはL字型」として、経済活動の制限が長引けば各社のメーンシナリオが崩れる可能性も大きい。超低金利の継続に加え、景気後退局面に入り、厳しい運用環境が続く。