働く車にIoT! 特装車の新たな需要開拓へ

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極東開発工業の粉粒体運搬車

ゴミ収集車や消防車などの“働く車”を手がける特装車メーカーが、IoT(モノのインターネット)技術の開発や導入を進めている。各社は車両の稼働状況を監視、記録して修理作業の効率化や故障前の部品交換などを提案できるシステムの市場投入を計画する。トラックメーカーなどが対応できない需要を掘り起こし、独自の付加価値を持つ製品・サービスの開発につなげる狙いだ。(大阪・錦織承平)

極東開発工業 稼働状況を記録、修理効率化

特装車メーカーは、商用車メーカーなどから購入した車台の上に、さまざまな機能を持つ設備を架装してゴミ収集車や消防車などの車両を製造する。車台は、すでに自動車メーカー各社がCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など先進技術の開発を進めている。そのため、特装車各社が開発・導入に取り組むのは、これらの車台の上に架装する設備についてのIoT技術が中心だ。

極東開発工業の「K―DaSS」概要図。ゴミ収集車や脱着ボディー車などの稼働状況を記録して、整備工場の作業員がスマホで見られるシステム「K―DaSS」を開発

極東開発工業は2019年1月、ゴミ収集車や脱着ボディー車などの稼働状況を記録して、整備工場の作業員がスマートフォンで見られるシステム「K―DaSS」を開発した。国内400カ所以上あるサービス拠点、OEM(相手先ブランド)供給先などで利用が始まっている。

「K―DaSS」は国内400カ所以上あるサービス拠点などで利用が始まっている

作業員は特装車の架装設備に触れる前に、スマホのアプリケーション(応用ソフト)を設備の電子制御ユニットと接続し、動作内容、発生したエラーの情報などを見られる。故障原因の特定など、長ければ数時間かかる作業時間を大幅に短縮でき、「サービス部門の反応も良好」(松本典浩技術本部開発部担当部長)という。

19年6月には対応車種に粉粒体運搬車も加えており、20年度中に車両状態を常時監視して、ユーザーからも見られるサービスを始める。

モリタHD ポンプ車など作動部情報収集、AI解析で不具合発見

消防車やゴミ収集車などを手がけるモリタホールディングス(HD)は、ポンプ車やはしご車などの作動部にあるセンサーの情報を専用通信機で収集し、人工知能(AI)で解析して不具合を見分ける技術を開発した。これまで延べ200台以上の車両に装置を設置し、顧客である消防署の協力のもと実証データを蓄積してきた。

モリタHDは、はしご車などの作動部にあるセンサーの情報を収集しAIで解析、不具合を見分ける技術を開発

20年4月から、はしご車と高所作業車を対象に、車両の稼働状況を遠隔診断して、故障の未然防止や適切な修理を案内する「見守りサービス」や、ユーザーが走ったルートを記録して、活動の振り返りに利用できるサービスなどを開始した。

同サービスは「ユーザーの声を聞いて拡充していく」(山田晃久グループ戦略本部モリタATIセンターEラボ長)方針。消防隊員の状態を監視する技術などと合わせて、火災現場を可視化するシステムなども開発を進める。

新明和工業 リフターとスマホ接続

新明和工業はトラック後部で荷物の揚げ降ろしに使うテールゲートリフターとスマホを接続し、動作回数やバッテリー電圧などの情報を取得して、故障の可能性などを診断するシステム「新明和スマートコネクト」を開発した。試験運用を経て、10月にユーザー向けアプリを無償配信してサービスを始める。

新明和工業はテールゲートリフターとスマホを接続し、動作回数などの情報を取得、故障の可能性など診断

「脱着ボディートラックやゴミ収集車は制御装置の入出力機能に余裕があり、機能を追加する余地がある」(横瀬秀人特装車事業部佐野工場設計部長)として、対応製品を段階的に増やし新機能開発も検討する。

課題/通信コスト・エリアカバー率

各社が開発・導入を進めるIoT技術だが、高機能化には課題もある。その一つが、車載通信機とサーバーを常時接続するための通信手段だ。「特装車は都市圏だけでなく山間地や人口が少ない地方で利用することも多いため、通信網は人口よりもエリアカバー率が重要になる」(秋山優二極東開発工業技術本部開発部課長)。

現状では携帯電話通信網以外に選択肢が少ないが、通信機器には車載できる耐久性も必要になる。こうした機器を架装設備の中でも単価の小さいテールゲートリフターなどに使うと、機器と通信のコスト割合が大きくなりすぎる。そのため、省電力広域無線網(LPWA)のような安価で広域に対応する通信網の早期普及を期待する声もある。

展望/顧客の潜在ニーズ、直接把握

特装車のユーザー側を見ると、意識の高い事業者が取り組みを始めているものの、IoT技術への具体的な要望はそれほど多くないのが現状だ。それでも各社がIoTサービスを投入するのは、ユーザーを刺激し、潜在ニーズを掘り起こそうとの狙いがあるためだ。

各社が開発した、車両情報を記録して故障を防ぐシステムでも「はしご車など高機能で代わりが少ない車両の稼働率を上げられる」(森本邦夫モリタHD取締役常務執行役員グループ戦略本部長)、「計画的に車両整備の日程を決めておけば、不足するトラックドライバーの働き方を改善できる」(横瀬新明和工業部長)といったニーズが見えつつある。

各社が主力とする国内の特装車市場は、一定の更新需要はあるものの新車販売台数の大きな成長は見込みにくい。ただ、特装車はそれぞれの目的に応じた特殊な機能を持っており、利用する現場のニーズもニッチなものが多い。これまでも各社はこうしたニーズに対応し、車台メーカーが対応できない製品やサービスを開発することで、成長してきた。

今後はIoT技術を介して顧客と直接つながり、特装車の新しい需要を開拓する動きが加速しそうだ。

私はこう見る

◆付加価値提案でユーザー開拓を いちよし経済研究所企業調査部主任研究員・高辻成彦氏

特装車各社はIoT技術・サービスに取り組み、アフターサービス需要を取り込むツールとする狙いだ。コマツの稼働管理システム「コムトラックス」のように稼働状態から耐用時間を見える化して、メンテナンスを提案していくのだろう。

ただ、ダンプトラックやゴミ収集車などはユーザーが小規模事業者の場合、どのくらいの需要があるかはわからない。一方、消防車などは、ユーザーが自治体であれば技術的なサポートも必要とされやすい。機器の交換時期などの提案ができれば予算も確保されやすいのではないか。

また、車両搭載型クレーンのように転倒防止機能の設置が義務化されているものもある。そうした安全機能と組み合わせて付加価値を付ければ、ユーザーも受け入れやすいかもしれない。(談)

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