【新型コロナ】自粛1 か月で 36.8 万人失業の可能性も
新型コロナウイルスの経済への影響を予測したレポートは民間エコノミストから多く出ている。かつてない規模の打撃も予想される中、緊急事態宣言の拡大で「 失業者36.8万人」とした、第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱 利廣氏のレポート「緊急事態宣言と緊急経済対策の影響」から抜粋して紹介したい。
新型コロナウィルスの感染拡大に対応する緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大した。新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言は、外出制限や交通規制に対して強制力がなく、海外で行われているロックダウンを実施することにはならないものの、既に7都府県に対して緊急事態宣言が打ち出されていた中での全国拡大になるため、更なる経済活動自粛の動きが強まることは確実だろう。
緊急事態宣言の対象となっていた7都府県の不要不急消費が一か月止まることに加え、今回新たに特定警戒となった6都道府県の不要不急消費が3週間止まり、特定警戒以外の不要不急消費が3週間半減したと仮定すると、通常に比べてGDPベースでは通常に比べて最大−7.2 兆円(年間GDP比−1.3%)の損失が生じることになる。近年のGDPと失業者数との関係に基づけば、この損失により 36.8 万人の失業者が発生する計算になる。
当初決定した生活困窮者世帯や子育て世帯への臨時特別給付金が全国民一律 10 万円給付となる他に組み換えがなければ、組み換え後の緊急経済対策は事業規模や財政支出の規模で 116 兆円や47 兆円とさらに大きな額となる。これまでの真水の総額に今回組み換えの 8.4 兆円を上乗せした 27.5 兆円に限った景気への影響を考えると、今年度の実質GDPの押し上げ効果は+6.3 兆円(GDP比+1.2%)前後にとどまり、1か月の緊急事態宣言に伴う損失を埋めきれないと見込まれる。
ただし、単純にGDP押上効果が足りないというだけで今回の財政政策が好ましくないという結論にはならない。この状況下では医療危機の緩和が最優先課題となるためであり、給付金は人々の現下の経済的困難に対して手を差し伸べることにより、家にとどまる人を増やし、ウィルスの拡散が抑えることを目的としているためである。
より早い段階で緊急事態宣言を発動して感染拡大を抑制できていれば、マクロ経済的なダメージも少なかったかもしれないし、緊急経済対策の規模も抑制できた可能性がある。仮に、リーマンショック並みに今後のGDPが落ち込むと仮定すれば、今年度の実質GDPは前年から−29 兆円程度減少し、経済成長率は−5.4%となる。悪影響を最小限に食い止めるためにも、政府の迅速で大胆な政策対応が求められる。