「ニッチなメガネレンズ」を狙う伊藤光学工業のモノづくり・ヒトづくり
伊藤光学工業(愛知県蒲郡市、伊藤寛社長、0533・69・3311)は、ニッチな商品を特徴とするメガネレンズメーカー。グリーンの起伏やラインが鮮明に見えるゴルファー専用サングラス、ユニバーサルデザイン商品の開発支援を目的とした高齢者の見え方を体験できるレンズなど、多種多様な商品を送り出している。ニッチ商品を生み出す土壌づくりについて伊藤社長に聞いた。(名古屋・浜田ひかる)
「大手メーカーや海外製に安さで勝つことはできない。価格競争で苦しんでいた15年前、当社にしかないものを生み出し続けなければと考え、少量多品種に移行した。現在、メガネ市場は価格面で二極化したが、当社は『ちょっといいメガネレンズ』を指向し、高価格帯に振り切った。月に一つは今までになかった商品のアイデアを形にしている」
―新商品開発で何を心がけていますか。「まずはやってみること。アイデアがあったら、それを具現化すること。商品の価値は市場が判断してくれる。だめだったら潔く手放せばいい。被写界深度延長レンズ『ESレンズ』は、そんな方針の下で生み出し、注目されている商品だ。3次元(3D)映像は長時間視聴する時の目の疲労が課題と言われるが、このレンズは疲労低減が図れる。2019年に米国で開催された世界最大のディスプレー関連学会の発表演題にも採択された」
―人材育成で意識していることについて教えて下さい。「『人々の役に立つ物を作りたい』という当社創業者の伊藤孟の思いを実践するよう自ら考えて動く“考動”できる人材を、どれだけ多く育てるかだ。一方で社内コミュニケーションの活性化も不可欠。そのため、若手や中堅社員を対象にランチミーティングや『今更聞けない座談会』を開催するなどして環境づくりに務めている」
―今後の展望は。「国内メガネ市場は4000億円前後で、単価の低下と人口減少により市場は縮小傾向にある。その中で当社が力を入れているのは(レンズ製造技術を生かした)光学部品分野だ。自動運転やロボティクス向けに今後、市場が伸びる見通し。その中でも当社はニッチ市場を狙う」
【ポイント/激しい競争、差別化が肝】
低価格チェーン店が増えたことで、より身近な存在となったメガネ。だが、国内市場の規模は単価下落や人口減少により、この15年の間に約20%も縮小している。価格競争とは一線を画す伊藤光学工業だが、中長期視点で次の成長軸を育成しようとしている。レンズ製造で培ってきた真空蒸着技術を生かして光学部品に機能膜をコーティングする事業だ。ただ、成長分野だけに競争も激しくなる。メガネレンズと同様に、差別化が肝となる。