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豊富な品揃えが強みの半導体卸、倒産へとはまり込んだ“在庫沼”

東京機工電子、考えさせられる倒産事例に

東京機工電子は、1985年3月に創業、86年5月に法人改組。半導体の卸売りを主力に、パソコン周辺機器、デジタル機器、電子部品などの販売を手がけていた。台湾の半導体メーカーの正規代理店となっていたほか、他メーカーの販売中止品を在庫として保持するなど豊富な品ぞろえを強みに、2005年4月期には年売上高約11億2600万円を計上していた。

しかし、リーマン・ショックの影響により受注が落ち込み、10年4月期の年売上高は約5億4900万円に減少。その後も東日本大震災など市場の急激な変化に対応できなかったことに加え、営業マンの不足により、業績は伸び悩んだ。また、同社の強みであった豊富な在庫が一転、多くの在庫を抱えることとなり、資金繰りが徐々に悪化していった。

このため、金融機関から借り入れを図ったものの、業績不振を理由に金融機関の対応は消極的で、思うような資金調達ができず、やむなくファクタリングや売掛債権譲渡担保による融資を利用し、その場をしのぐようになっていった。

こうしたなか、19年2月頃、一部債権者から同社の預金口座の差し押さえを受けたことで、ようやくこぎつけた金融機関からの新たな借り入れが取りやめとなった。その後、さらに手数料が高額なファクタリングの利用や従業員などからの借り入れでしのごうとしたが、資金調達も限界に達し、同8月30日に事業を停止。20年2月12日に東京地裁へ自己破産を申請した。

同社は、取引先のニーズに迅速に対応できるように、幅広い商品在庫を多く抱えることで差別化を図っていたが、事業停止の数年前から在庫管理ができておらず、在庫リストと実際の在庫が合わない状況が続いていたという。

これではどの商品が売れ筋で、どれが売れ残っているか正確に把握するのは困難であることは言うまでもない。在庫管理の重要性をあらためて考えさせられる倒産事例となったのではないだろうか。

(帝国データバンク情報部)

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