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MRJは日本の航空機産業を変えるのか(下)

「モノづくり日本会議」の講演会から
MRJは日本の航空機産業を変えるのか(下)

「航空機は中抜け産業だ」と萩本副会長


 政府は現在、新しい「航空産業ビジョン」の策定作業を進める。議論のきっかけになったのは14年に自民党がまとめた提言。「30年代早期に自動車並みの世界シェア15―20%を目指すべきだ」と提唱している。現在の4倍以上だ。航空機産業は今後、大幅な飛躍が期待される。
 こうした中、国内航空機産業では部品の「一貫生産」が進む。サプライチェーン(供給網)を効率化し、部品の増産とコストダウンを進めようとしている。6月には機体部品のサプライヤーでつくる「航空機部品生産協同組合」が、三重県松阪市と立地協定を結んだ。他にも全国で一貫生産に取り組む事例が見られる。
 他方、三菱航空機(愛知県豊山町)が開発する国産小型旅客機「MRJ」は10月に試験機の初飛行が迫る。民間分野ではボーイングや欧米エンジンメーカー向けの部品供給にとどまる日本の航空機産業に、半世紀ぶりの”完成品“が登場するインパクトは大きい。

 MRJを機に装備品や整備・修理(MRO)事業への国内企業の参入が進み、産業の裾野が広くなると期待される。MRJには型式証明の取得など課題も多いが、乗り越えてほしい。

(了)
日刊工業新聞2015年09月日付け紙面を再編集
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 航空機の世界は、よく20年単位で物事を決めます。メーカーも、エアラインも、かなり先の市場動向を予測し、今すべき投資を実行していきます。  さて日本。ボーイング機増産にMRJが重なり、国も地方も航空機産業の振興に走り出しています。とはいえ航空機産業の参入障壁は高く、時間もお金も、そして精神力(長い投資回収期間に耐える経営者の胆力)も必要です。そして、「基幹産業」といえるだけの存在感を持つためには、いつかはボーイング、エアバスの牙城に挑むことも、必要になってきます。  40年前、YS-11で挫折した「基幹産業化」の道を、日本はこじあけられるかどうか。まずはMRJが試金石になりますが、来たるべき次期国産旅客機に向けて、参入できるメーカーを1社でも多く育てるべきだと考えます。

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