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MRJは日本の航空機産業を変えるのか(上)

「モノづくり日本会議」の講演会から
MRJは日本の航空機産業を変えるのか(上)

10月後半に初飛行が予定される「MRJ」



巨額投資必要、連携に期待


 航空機関連の技術開発は、安全性を理由に実用化までに長い時間がかかる。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、機体を軽くして燃費性能を向上するために1970年代から研究されてきたが、実用化までに50年近くかかった。産官学が協力し、大学で基礎研究、国の機関で応用研究、企業が実用化する連携体制が望ましい。
 さらに、研究には巨額の投資が必要であり、タイムリーな新技術の活用には、外部知財を積極的に使わなければならない。海外ではM&A(合併・買収)が盛んだが、日本でも自社技術に固執せず、オープンイノベーションとして開発の外部委託など外部知財を生かすことも必要だ。

 日本の航空機産業の課題には、航空機製造会社と航空会社の連携がないことや、行政の管轄が統一されていないことが挙げられる。行政でいえば製造は経済産業省、運航は国土交通省、教育研究は文部科学省、自衛隊は防衛省とバラバラだ。
 産業の裾野の広さも生かされていない。三菱航空機(愛知県豊山町)の国産小型旅客機「MRJ」開発はこうした課題を打開するためにも期待したい。
 日本の大学の研究教育は、分野横断的な活動が少ないという指摘もある。東京大学には、技術と政策と産業を一貫して扱う三菱重工業の寄付講座や、米ボーイングからの教育寄付がある。交渉学演習や高校生を対象とした体験講座も好評だ。今後は、産業界の教育への積極的関与を期待したい。

(後編は9月30日公開)
日刊工業新聞2015年09月23日付紙面を再編集
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 夏に名古屋で開かれた講演会の詳報を、再編集しました。過去に三菱総研が行った推計では、航空機の技術波及効果(技術が他産業に波及して生まれる生産額)は自動車の約3倍にも達すると言われています。航空機は、生産額自体はそれほど大きくないものの、他産業に及ぼす影響は圧倒的に大きいとされます。  MRJや米欧向けの製造をテコに、世界的な成長産業を国内に取り込むことができるでしょうか。それが最大の課題とも言えます。

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