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MRJは日本の航空機産業を変えるのか(上)

「モノづくり日本会議」の講演会から
MRJは日本の航空機産業を変えるのか(上)

10月後半に初飛行が予定される「MRJ」

 日本の航空機産業が、"飛躍"の時を迎えている。三菱重工業グループが開発する国産小型旅客機「MRJ」は10月下旬の初飛行が迫ってきた。世界の旅客機数は今後20年で倍増すると予測され、関連メーカーはMRJ」の開発や欧米向けの部品供給、自衛隊向け製品の海外輸出・民間転用などで、事業の拡大に挑もうとしている。政府も航空機を自動車と並ぶ基幹産業に育てるべく支援を加速している。
 ニュースイッチでは、8月25日に名古屋市内で開かれた「モノづくり日本会議」の研究会での議論から、航空機産業の今後について考えてみたい。

モノづくり日本会議 第10回中部地区研究会
 「航空機産業の現状と課題」
 登壇者一覧
 ・東京大学大学院教授 鈴木真二氏
 ・多摩川精機副会長  萩本範文氏
 ・日刊工業新聞社名古屋支社編集部 杉本要

「航空機産業のGDP比率、欧米の5分の1」―東大・鈴木氏


【東京大学大学院教授・鈴木真二氏講演/航空機産業の動向とイノベーション】

 日本航空機開発協会(JADC)によると、世界の航空輸送量は年間4・5―5%の伸びで、15年間で2倍になるとされる。特にアジアの経済成長を背景に太平洋地区の航空輸送量は今後10―20年間で急成長が見込まれ、航空機産業は非常に活気づくだろう。一方で日本の航空機産業の国内総生産(GDP)に占める割合は0・3%と欧米の約5分の1。産業規模は自動車の30分の1―40分の1程度にとどまる。国力から見ればあと3倍の規模があってもいい。

 世界の航空機の開発目標は「より高く、より遠く、より速く」から、今世紀は「機体や運航のコストを減らす」「安全性を高める」「二酸化炭素(CO2)の排出や騒音を減らす」の三つに移行している。特に格安航空会社(LCC)の台頭を背景に、運航コストの削減は重要な開発課題と言える。

 飛行機の就航数増でCO2の排出が増えるのも大きな課題だ。2020年の東京オリンピック開催時には日本へ飛来する航空機の増加が予想される。低炭素燃料として、都市ゴミや製鉄所ガス由来の石油のほか、藻や天然油脂、バイオマスを原料にしたジェット燃料開発が進行している。

日刊工業新聞2015年09月23日付紙面を再編集
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 夏に名古屋で開かれた講演会の詳報を、再編集しました。過去に三菱総研が行った推計では、航空機の技術波及効果(技術が他産業に波及して生まれる生産額)は自動車の約3倍にも達すると言われています。航空機は、生産額自体はそれほど大きくないものの、他産業に及ぼす影響は圧倒的に大きいとされます。  MRJや米欧向けの製造をテコに、世界的な成長産業を国内に取り込むことができるでしょうか。それが最大の課題とも言えます。

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