カーナビ各社、高付加価値提案で既存事業から脱却なるか
カーナビゲーションシステム各社が、既存事業からの脱却を図って付加価値を高める提案で成果を出し始めた。仏フォルシアの事業部門として始動したフォルシアクラリオンエレクトロニクス(FCE)は、グループ内のシナジー創出に力を入れ大型の新規案件を受注した。アルプスアルパインは最新技術を市販用カスタマイズカーに組み込み、製品力を高める。パイオニアは外部連携を強化し新技術・新サービスの開発につなげている。(取材・松崎裕)
【グループ内融合】
FCEは2019年の設立後、クラリオンのエレクトロニクスと、フォルシアのシートやコックピット周りといったそれぞれの強みの自動車部品でグループ内全体の融合を進め開発力を強化する。さらに製品開発の連携や、グローバル展開するフォルシアの部品調達網の相互活用だけでなく、組織をスリム化して固定費を削減するなど競争力を高めている。これにより日系自動車メーカーからコックピットと先進運転支援システム(ADAS)に関する新規大型案件を受注した。
村上洋クラリオン社長は「19年は新しい注文を積極的に取ったため21、22年の売上高は増えそうだ」と強調する。FCEは25年までに売上高を19年比2・5倍の約3000億円とする目標を掲げており達成に弾みをつける。
【カスタマイズカー】
旧アルプス電気と旧アルパインの経営統合で発足したアルプスアルパインは、カーナビなど市販用の車載製品としてブランド力のあるアルパインブランドを活用し、旧アルプス電気の車載部品を含めた統合的な提案を進める。グループのシナジーに一役買っているのがカスタマイズカーを直営販売するチャネル「アルパインスタイル」だ。
アルパインスタイルでは開発した最新の車載製品を組み込んだカスタマイズカーの市販を始めた。木目や金属などを再現する加飾印刷や、高級感を演出するリフトアップスピーカー、カーナビ、ディスプレーオーディオなどを一般ユーザーに提案する。
新車向けの車載事業は開発期間を踏まえれば3、4年先のモデルの開発が前提となる。最新技術を組み込んだ製品を市場投入するまでに時差が生じユーザーニーズがずれる可能性が出てくる。部品メーカーでありながら実車に最新技術を搭載し販売することで、ユーザーの声を直接吸い上げ改善した新製品を世に送り出す体制を構築する。
【データビジネス】
経営再建中のパイオニアは企業や研究機関との連携を強化し、1社単独では難しい新技術・新サービスの開発につなげ経営再建の足がかりにする。カーナビ事業で培った地図や道路に関連するデータを活用し、データビジネスを新たな収益の柱にする。20年にはスイスの再保険大手スイス・リーと共同で自動車の安全運転を支援する新たなテレマティクスサービスを開始し国内外のデータビジネスの拡販を急ぐ。
また、キヤノンと高機能センサー「LiDAR(ライダー)」の共同開発を進め今秋には量産体制を構築する運びだ。韓国のSKテレコムと協業することで、ライダー内の送信モジュールや単一光子検出器を採用し、遠距離計測が可能なライダーを開発した。
他社との協業を強化するパイオニアの矢原史朗社長は「ソリューションやデータ系の領域でハード系のメーカーとの協業もありうる」と話す。大胆な連携の可能性を否定せず、イノベーションにつなげる構えだ。