「CASE」時代へカーナビはどこまで進化するか
カーナビゲーションシステムを手がける各社は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の本格的な到来を見据え、車室内の新たな過ごし方を提案する。次世代コックピットや付随するヒューマンマシンインターフェース(HMI)の操作性、音響技術による快適性や安全性の向上など、それぞれの強みを生かした付加価値提案に力を入れる。(取材・松崎裕)
仏フォルシアの一部門フォルシアクラリオンエレクトロニクス(FCE)は音声認識技術を使ったコックピットシステムを開発した。音声で座席位置や空調を自動調整する指示が出せるほか、外部との通信機能を生かし自宅のエアコンや掃除ロボットなど家電製品を操作することも可能だ。カーナビのルート案内と連携し帰宅途中にエアコンを操作し空調が効いた部屋に帰るといった使い方もでき車と生活をシームレスにつなぐ。
さらにカメラやレーダーなどのセンサーを駆使して運転手や同乗者の状態をモニタリングする新システムを開発する。センサーで取得したデータから室温管理やノイズの軽減など車室内の快適性を向上する開発を進める。FCEの川端敦エグゼクティブ・バイス・プレジデントは「センサーを使い、キャビンをモニタリングするソリューションビジネスは今後の成長分野」と期待を寄せる。
アルプスアルパインは、コックピットのディスプレーやコントローラーの操作性を高めるHMIの開発に注力する。触覚フィードバック技術を使った「ハプティックコマンダ」は、一つのコントローラーでカーナビやオーディオなどさまざまな機能を感覚的に操作できる。
運転手は前を向いて視線をそらさずコントローラーを操作するため、より運転に集中できる環境を支援する。操作機能を集約した大型ディスプレーはコックピットのボタンを減らしたいというニーズに応え、広い空間づくりにつながる。
カーナビのルート案内においても出発前に目的地を決めておけば、運転手の好みや予定に合わせてルートを自動提案するレコメンドエンジン機能を搭載し運転の快適性を高める。
デンソーテン(神戸市兵庫区、加藤之啓社長、078・671・5081)は、新たな発想で車室内の音響環境を変える技術を提案する。ディスプレーの画面上で音声を再生する車載用の「ディスプレースピーカー」を開発した。ディスプレーの背面に振動デバイスを組み込みスピーカー機能を備える。スピーカーをなくすことで小型化や省スペース化でき車全体の軽量化につながる。
ディスプレースピーカーは映像と音声が一体化することで映画の台詞が聞きやすくなり躍動感や臨場感をより体験できる。さらに座席ごとにディスプレーを配置することでパーソナライズ化された空間や、将来の完全自動運転を見据え車室内の快適な過ごし方を提案する新たなエンターテインメント空間づくりを提案する。