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Instagramをフル活用したブランディングが成長の鍵

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)バックパックのブランド「Herschel Supply」のエンゲージメント戦略
Instagramをフル活用したブランディングが成長の鍵

「Herschel Supply」のウェブサイト


リュックの購入には興味のない人も惹き付けるコンテンツマーケティング


 Herschel Supplyは、こうした伝統的なテイストを残した飽きのこないデザインと、細かな要望に応えてくれる機能性から、日常から登山まで幅広く使えるブランドとして人気を得てきた。またバッグ販売のみならず、Instagramを使って認知度をあげることにも余念がない。

 その施策のひとつに、写真を使ったコンテストがある。たとえば「Well Traveled」(旅好き、旅通という意味)というテーマを設け、そのテーマに沿う写真を撮影して#Well Traveledと#Herschel Supplyいうハッシュタグをつけてユーザーに投稿してもらい、その中からHerschel Supplyが選んだ写真にHerschel Supplyの商品交換券をプレゼントする、というものだ。

 このコンテストはHerschel Supplyの商品が写っている写真である必要はないので、写真や風景、旅行などに興味を持つ人たちはなんの制限もなく参加することができる。2015年の春には「#CityLimitless」というハッシュタグにて、都市に焦点をあてて撮影された写真の投稿コンテストも行い、2万2000人の応募を得た。なお、これらコンテスト用に投稿された写真はInstagramのみでなく、ブログにも利用されているという。

 現在のHershcel SupplyのInstagramのフォロワーは64万超。これだけの人たちの注目を集めたことについて、マーケティング担当者のAllison Butula(以下バタラー)氏は、リュック以外に興味を持つ人たちを多く取り込んだことを挙げている。

 「リュックの購入に興味がない人でも旅、写真、音楽には興味があるでしょう。そういう商品以外のテーマもHerschel Supplyはカバーしているのよ」(バタラー氏)

 短期的な売上追求ではなく参加してもらいやすい場所にすることに注力

 Herschel Supplyはまた、ブランディングの観点から、「セールス感」が出ないように気をつかい、「ショップ」とか「今すぐ購入」といった言葉はなるべく使わないようにしているのだという。これはソーシャルメディアの運営を商品を売ることのみに限定していたら、購入後の顧客からもエンゲージされにくくなってしまうためだ。

 できるだけ長期的な関係を築くために、リュックの購入に興味のない人から、既に商品を持っている顧客まで、いつでも楽しめ参加できるようなソーシャルメディアを行っている、この点が数多くのフォロワーを惹き付けてきた理由だ。

 短期的な売上を追うのではなく、エンゲージメントを重視して大幅な認知度アップにつなげている点は、ブランディングを重視しているEC運営にとって大いに参考にできる点だろう。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
フェイスブックはInstagramからECサイトへの誘導を可能にするなど日本で広告策の強化に動き出した。ますますInstagramから目が離せない。一方で今のインスタの世界観、雰囲気をどこまで守れるかも課題になりそう。

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