新生銀、ドレスコード撤廃が生んだ自縄自縛と現場力の向上

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顧客と従業員の双方から好感触を得た「カジュアルウィーク」(東京都新宿区の店舗)

新生銀行は金融機関としては多様な人材を擁すると自負しており、個々人の能力を生かす観点で柔軟な働き方を追求してきた。営業店を含めて服装規定を撤廃するなど、意欲的な取り組みも目立つ。今後は社員の意識改革をこれまで以上に進め、各制度の実効性を向上することが期待される。(取材・斎藤弘和)

「個々の人の力を最大限に引き出し、より効率的に活用することに尽きる」。新生銀行の林貴子執行役員人事部長は、自社グループが働き方改革に力を注ぐ背景を明快に語る。

前身である日本長期信用銀行の破綻を経て2000年に始動した新生銀は、外資系ファンドの傘下に入っていた影響などから、中途採用された社員が多い。金融以外の業界から入社した人もいる。林執行役員はこうした経緯が「組織は時々の状況に応じて社会に価値を提供し、それに見合うリターンを上げれば良い」という発想を育み、柔軟な働き方が尊重される風土の形成につながったとみる。

とはいえ、多様性を追求する過程では葛藤や試行錯誤が伴う場合もある。19年8月、自社グループ全体でドレスコードが撤廃された際、戸惑う社員は少なくなかった。特に営業店では、顧客に不快感を与えてはいけないという考えが強いためなかなか進まず、「自縄自縛のような状態だった」(林執行役員)。

そこで新生銀は翌9月、首都圏の複数店舗で「カジュアルウィーク」を実施。営業店での服装の切り替えを促しつつ、生活者の反応を確かめることを狙った。対象店舗の一つである新宿フィナンシャルセンター(東京都新宿区)では、従業員がシャツやブラウスなどを着て接客した。

顧客からは「(銀行の営業店では)まだ早い気がする。私より上の世代の人は、もっとそう思うのではないか」(50代男性)との指摘があったものの、概して肯定的な意見が寄せられたという。他方、社内では「スニーカーだと帰宅後の足の疲れは全然違う」(20代女性行員)といった感想が挙がった。

林執行役員はドレスコード廃止の背景に「どこの銀行も店舗は規律が重んじられるので、何をするにも(組織として)決めてからでなければ動けない気質になっている」との問題意識があったと明かす。社員が服装を考えることを通じて自律的に判断する習慣を身につければ、現場力の向上も期待できる。

進めてきた一連の働き方改革の努力は、直近の厳しい環境下でも生きた。20年2月、国内で新型コロナウイルスの感染が拡大した際は、もともと制度としてあった在宅勤務や時差出勤を推奨。

同月27日には政府が一斉休校を要請する事態になったが、新生銀グループでは翌28日、子どもの世話をする人がいないなどの事情がある社員向けに特別休暇を与えることを決めた。

「グループ会社も一体運営で人事部が一つになっているので意思決定が早い」と林執行役員は胸を張る。今後も多様な働き方の枠組みを従業員が有効に活用できるよう、一層の社内啓発が望まれる。

日刊工業新聞2020年3月25日

キーワード
新生銀行 働き方改革

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